中国の消費は強いのか
日本でもようやく馴染み深いものとなった、中国の恒例11月11日のセールイベント、「独身の日」が今年も訪れた。同イベントの仕掛人でもあるネット通販大手アリババ集団は、2020年の独身の日のセールの売り上げが過去最高となる4982億元、前年比26%増と発表した。
だが、本当に中国の消費は強いのか。三つの観点で注意が必要である。まず、(1)今年のセールは、例年通りの11月11日の1日限りではなく、11月1~3日と3日間追加された分も含まれている。同イベントによる売上高の大きさは異常で、流通に大きな負担となるため、それを緩和するために日程を分散させたという側面もある。だが一方でセールを長引かせるときは、決まって購買意欲が弱いと判断されているときでもある。
次に(2)購入のうち、需要の先食いが多くを占めている可能性である。一部報道では「目立ったのがトイレットペーパーやおむつなど日用品の大量購入」(日本経済新聞2020年11月13日付)ともされている。安いセールの時に買ってしまえば、今後しばらくは買う必要がない。今後の消費は弱含んでしまう。
そして(3)最後にマクロ指標の動きである。確かに中国の消費は回復してきた。9月の小売売上高の伸び率は前年比3.3%増である。但し、他のマクロ統計と比べて強いかと言われるとそうでもない。比較のために、1~9月累積ベースの前年比でみると、小売売上高は前年比7.2%減のマイナスとなっている。一方で工業生産付加価値は同時期前年比1.2%増のプラス(9月単月では前年比6.9%増)、固定資産投資は前年比0.8%増(単月の発表はない)と同じくプラスだ。
経済全体の動きを総覧できるGDP統計でも1~9月累積で前年比0.7%増とプラスであることを考えると、消費が8月以降ようやくプラスに転じただけで、中国全体の中では弱い箇所であることがわかるというものだ。
中国経済が、他国に先駆けて新型コロナウイルスの影響から立ち直ったことは既に多くの知るところである。だがそれはインフラ投資や不動産投資を中心とした政策中心の回復であり、自立的な消費は比較的鈍かったようだ。
それにも関わらず、筆者には投資家の皆様から「中国ではユニクロや無印が堅調であるが、やっぱり中国の消費は強いのか」というご質問を頂く。何が起こっているのか。