2024年4月30日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年8月21日

 あくまでも一般論の形をとり、また、ゼロサム・ゲームはいけないなどと留保はつけていますが、人権問題、透明性、公正な経済制度、他国の主権の尊重を掲げれば、それは、米国の対中政策そのものと言えます。いずれも、現在、中国が最も言って欲しくないことです。

 今年の5月に、クリントン長官が中国で陳光誠事件に際して、胸に浮かんだことを書いたと言っていますから、語るに落ちていると言えます。

 ヒラリー長官の才能とその挙措進退とには讃嘆します。オバマ政権発足後一年間、オバマ大統領がイラン、北朝鮮との直接対決を呼びかけ、ロシアとの関係のリセットを謳い、プラハで核廃絶を訴え、カイロで全アラブに呼びかけている間、ヒラリー長官は、それがすべて国務長官の所掌であるにもかかわらず、全く沈黙を守りました。わずかに、国務省の制度改革について述べ、国連の婦人の地位委員会で発言しただけでした。

 それが、2010年初頭、米中関係の風向きが変わるや否や、1月のホノルル演説を初めとして、アメリカのアジア復帰を、「オバマ政権成立以来の一貫した政策」として唱え続け、遂には、それをアメリカ全体の政策としました。

 ヒラリー長官が、本年の大統領選挙後、来年には国務省を去る意向を既に明らかにしているのは残念ですが、今までのヒラリー長官の出処進退を考えますと、将来について深く考えるところはあるものと推察します。

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