2022年12月2日(金)

WEDGE REPORT

2020年11月26日

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楊 建利 (よう・けんり)

米NGO「公民力量」主宰者

中国山東省生まれ。米カリフォルニア州立大学バークレー校数学博士、ハーバード大学政治経済学博士。天安門事件時に民主化運動を支援。1992~2002年、米国で「21世紀中国基金会」の主席を務める。02年、中国東北地方の労働運動支援で逮捕され実刑判決を受け、07年中国から国外追放。同年、米国で民主運動NGO「公民力量」創設。
 

経済不得意の習氏
企業からの略奪が増える理由

 習近平は政治面で運が良かったのに対して、経済面の運は非常に悪いと言える。江沢民・胡錦濤時代に蓄積された経済の病が顕在化し、景気後退が始まっているからだ。政治が得意な習近平は、経済は得意ではない。

 習近平の反腐敗政策は資本の抑制にまで及ぶ。彼は、共産党の特権により蓄積された富と資本の没収と管理は当然であり、新たな官民合同経営と権力の市場への介入が必要不可欠だと考えている。また、多くの資源を管理する民間部門が政権に脅威を与えるのではないかと、懸念も抱いている。

 財源の枯渇と安定性を維持する費用の高額化により、権力が中産階級や民営企業といった民間部門から略奪する傾向はますます強まっている。これは、共産党統治の社会的基盤、つまり政治的エリート、経済的エリート、社会的エリートの集合体の解体を意味するものであり、習近平は改革開放時代以来、共産党が買収してきた社会的基盤を失い始め、その結果、彼の統治は、政治的に高い圧力をかけてしか維持できないもろい構造になった。

 天安門事件以降、揺らぎ続けている共産党政権は、統治の優位性を維持するために二つの正統性の源泉に依存してきた。一つは急速な経済発展で、共産党の統治はこれによって、上述の社会的基盤を確立した。もう一つはナショナリズムである。景気後退は、第一の正統性の源泉を徐々に枯渇させ、習近平は、中国が世界第二の経済大国であるという共産党の言説に沿って、第二の正統性の源泉であるナショナリズムにますます依存しなければならなくなった。

 これは何よりもまず、外部に向けた権力の拡大と、支配の強化を意味する。世界を支配するための赤い帝国の設立は、まさに習近平の中国の夢であり、一帯一路、南シナ海による軍拡などが示すように、習近平はおのずと外部への拡大の道を突き進んでいる。

 だが、習近平の覇権と積極的な外交によって、共産党は現在、改革開放時代以降、最も深刻な外交リスクを経験している。

 共産党の政治言説における内部に向けてのナショナリズムには、大漢民族主義が表れている。習近平は人口の92%を占める漢民族の国民感情を動員し、権力を強化するためには、「反逆心」を持つ民族や地域を抑圧するか、排除しなければならないと考えている。習近平政権は、チベット族、ウイグル族、モンゴル族に対して前政権とは比較にならないほど残酷な文化的絶滅を、「政治的異郷」である香港には政治文化の絶滅を実行しようとしている。

 香港の逃亡犯条例改正案に反対する抗議デモにおいて、自らの政治的および文化的アイデンティティを擁護しようとする香港の人々の決意を目の当たりにした習近平は、それを容認できず、20年7月1日に「香港国家安全維持法」を強制的に施行した。抗議デモで既に三度逮捕されていた周庭は、8月10日、またしても香港警察に逮捕された。11月23日に香港で裁判が開かれ、即日収監された。12月2日、彼女が誕生日を迎える前日に量刑が言い渡される。

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