2024年11月24日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年8月24日

輸出産業の大不況と「リストラの嵐」

 「利益95%減」というのは、もはや業界の崩壊を意味するような吃驚仰天の数字であるが、鉄鋼などの重工業と並んで、今まで中国の高度成長を牽引してきた輸出向けの軽工業も、中国全体の対外輸出が大幅に減少した影響を受けて傾いている。

 中国税関総署が8月10日発表した7月の貿易統計によると、輸出は前年同月比1.0%増と、11.3%増だった6月から急減速したという。実は2011年にいたるまで、中国の対外輸出は毎年ほぼ25%以上の伸び率で拡大してきて国内の雇用と成長を支えてきたが、今になってそれが「1.0%」となるとは、まさに悪夢のような光景である。

 鉄鋼産業などの重工業も輸出向けの軽工業も労働密集型の産業であって、今まで多くの労働力を吸収してきた。だが、今、この両方が不況に陥ることで、「不要」となった労働力が大量に吐き出され、深刻な失業問題が生じている。今年の7月に入ってから、中国の沿岸地域で企業倒産とリストラの嵐が吹き荒れ、職を失った農民工の「帰郷ラッシュ」が起きていることを国内の各メディアが報じているのは、その一つの現れであろう。

 そして8月17日、全国的に有名な週刊紙「南方週末」が、「リストラの嵐が吹き荒れ、従業員が(使用済みの)トイレットペーパーの如く棄てられる」というショッキングなタイトルの記事を掲載して、現在の全国的な「リストラの嵐」の実態をリポートしている。たとえば、中国東北地方最大の石炭企業である黒龍江龍煤鉱業集団は、1万2000人規模のリストラ計画をすでに実施に移しているという。

消費が冷え込み
飲食店が毎月15%廃業 

 多くの人々がリストラされるような状況になると、国民の消費も当然冷え込んでいく。中国国家統計局が8月に発表したところによると、7月の消費財小売り総額は名目ベースで前年同期比13.1%増の1兆6315億元(約20兆4264億円)で、6月の13.7%増から0.6ポイント減だったという。消費の冷え込みは明確である。

 中国証券報という経済専門紙が8月11日に掲載した記事がそれを裏付けている。記事によると、中国の百貨店・小売業関連の上場企業の多くが8月10日までに中間決算報告を発表したが、発表されたデータでは、これらの企業の売上高の成長鈍化が目立っているという。

 記事によると、百貨店・小売業関連上場企業の売上高が伸び悩んでいる背景には、マクロ経済の成長減速と上半期の物価高騰の影響により、消費需要と消費意欲が低下したことがあるという。


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