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復活のキーワード

2012年9月10日

 たまらないのは、日々、国際競争に晒されている日本企業である。

JTに見るIFRS導入の前後 (2012年3月期)
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 日本たばこ産業(JT)は12年3月期決算から、従来の日本基準をやめ、IFRSに変更した。周知の通り、JTは海外でのM&Aを繰り返してきた企業だ。07年には英タバコ大手ガラハーを2兆円超で買収している。

 IFRSに変えた結果どうなったか。

 同じ決算でありながら、日本基準だと3747億円の営業利益がIFRSでは4592億円に、2274億円の純利益は3209億円に変わったのだ。のれん代を償却しなくなったことで利益を押し上げたのである。

 同様に自主的に日本基準を見捨てる企業が増えている。武田製薬も14年3月期からIFRSに変える予定だ。武田は昨年、スイスの製薬大手ナイコメッドを1兆1000億円で買収するなど、買収戦略を加速させている。

 また、総合商社も軒並みIFRSに変える。すでに住友商事が切り替えたほか、14年3月期には三菱商事、三井物産などもIFRSにする。現在の総合商社は海外企業に積極的に出資する投資会社に近い業態だ。それだけにM&Aは日常茶飯事だ。買収案件で海外企業と競う際に、会計基準に邪魔されたくない、という思いが強い。

 JTは決算発表の際、会計基準を変えた理由を2つ挙げた。1つは「資本市場における財務情報の国際的な比較可能性」。ライバルである欧州企業はIFRSを使っている。世界の投資家が企業同士を比較する場合、日本基準だと見た目が大きく不利になる。国際企業と同じ土俵で戦いたい、ということだ。

 もう1つは「国際的な市場における資金調達手段の多様化」だ。世界中どこでも通用する会計基準を使うことで、世界中で資金調達が可能になる、というわけだ。事業のグローバル化が進んでいるJTの場合、世界の様々な場所で資金調達する必要が生じる可能性がある。そればかりではない。世界の金融・資本市場が一段と不安定さを増す中で、日本企業がいつでも潤沢に資金を調達できる今の環境がいつまでも続く保証はない。


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