2024年12月19日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年9月18日

 ・集団的自衛権の行使の禁止は同盟の障害となっている。トモダチ作戦では、何の障害もなく日米両軍が完全に一体となって活動したのに、それが日本の安全という最も深刻な事態では許されていないのは皮肉なことだ。

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 もとより、日本に最大限に好意的な報告書であり、異論を唱えるべきところはほとんどありません。上記では、報告書中の全ての提言を紹介したわけではありませんが、いずれも取り入れるべき提言であり、特に、集団的自衛権行使の直接の効果は南シナ海を通じてホルムズ海峡に至るシーレーンの日米共同防衛にある、というのは、全くその通りです。

 文章は、明らかにアーミテージによって起草されたものでしょう。ナイという人は、特別のイデオロギーのある人ではなく、それだけに思考の幅もあるので、超党派という看板のために担がれているのだと思われます。

 一方、アーミテージは徹底した親日派です。かつて南ベトナムの崩壊前は、南ベトナムの建設に全力を尽くしたが、その後、特にレーガン政権の国際担当次官補となってからは、日本を米国の良きパートナーとするために一貫して努力して、全くブレていません。

 ブッシュ政権の第一期に国務副長官となり、この報告書でも言っているように、中国がどう変化しても対応できる日米同盟を作ろうとして日米戦略協議を始めましたが、当時の日本側にその問題意識が全く無く、挫折してしまった経緯があります。多くの米国のアジア通は日本に期待して裏切られて、中国の方に向う例が多いのですが、アーミテージはその後も、一貫して、日本を米国の真のパートナーに育てようとして不屈不撓の努力を続けています。日本にとっては、まことに有難い人物です。

 かつて、フランスが核武装を決意したとき、ド・ゴール大統領は、「フランスは第一級の国家であり、第一級の武器である核兵器を持てない理由は無い」という趣旨の演説をしていました。

  フランスがそう言うのならば、人口、経済力、技術力から言って、日本もまた潜在的には第一級の国家たる資格は十分あるでしょう。この報告は、その点についても、事実を挙げて論考しています。日本人さえもあまり口にしない「日本第一級国家論」を主張するアーミテージの親日姿勢には感嘆せざるをえません。そして、「第一級の国家となることを志す」というのは、よい国家目標であると言えるでしょう。

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