2024年11月23日(土)

World Energy Watch

2021年2月25日

経済と雇用への効果は本当だろうか

 成長戦略で謳われるのは、温暖化対策を進めれば、蓄電池、洋上風力、水素製造設備などへ新規投資が誘発され需要増と雇用増に貢献するということだ。その効果は2030年に年額90兆円、2050年に年額190兆円とされている。新規の設備が作り出す「製品・サービス」に需要があっての投資だが、エネルギー・電気のような必需品では新設備により価格が上昇しても需要家は負担増を受け入れる他ない。その結果、支出額に制限のある消費者は他の商品の消費を減らすことを強いられるだろう。収入の伸び悩みに苦しむ日本の世帯は、被服費、パック旅行費、教育費などを削減しているが、必需品に近い通信費と電気料金の削減が難しいことが家計調査から分かる(図-3)。

 再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく令和2年度の買取価格は、着床式洋上風力については入札で決定だが、日本の洋上風力の主体になる浮体式では1kW時当たり36円+税だ。送配電費を含む産業用電気料金(2019年度平均)約17円の2倍以上だ。250kW時以上の太陽光発電設備の買取価格は入札で決まっているが、昨年末の平均落札価格は1kW時当たり11.2円になっている。洋上風力発電の高価格は、当然電力消費者の負担額の上昇を招くことになり、経済へは悪影響をもたらす。

 雇用への効果にも疑問がある。雇用が増えるとされるが、どの分野だろうか。あちこちにある太陽光発電設備で働いている人を見ることはない。太陽光、洋上風力のような再エネ設備では建設のための雇用はあっても、操業するための雇用はほとんどない。設備を建設している間は雇用があるが、一旦完成すれば地元には雇用は生まれずお金は落ちない。

 しかも、経済効果、雇用をもたらす投資が、そもそも実現するのかも疑問だ。厳しい国際競争を日本企業が勝ち抜くことが可能だろうか。政府のグリーン成長戦略の14分野からエネルギー供給の中心になるとされる「洋上風力発電」と「水素」を取り上げて、成功の可能性を考えてみたい。


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