World Energy Watch

2020年10月28日

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 英国は2050年までに温室効果ガスの純排出量をゼロにする目標を掲げ、達成のため老朽化が進む原発の閉鎖と代替設備の新設を計画しているが、東芝に続き、日立も新設の条件面で英国政府と合意に達することができず、英国事業から撤退した。今後の原発建設はフランスと中国企業が担うが、先行きには暗雲が漂い始めている。

(Daniel Limpi / EyeEm/gettyimages)

 フランス電力(EDF)と中国広核集団(CGN)を中心とする中国企業が合同で建設しているヒンクリーポイントC原発に続き、仏中合弁で4基の原発を建設する予定だが、英国政府は5G通信網からの中国ファーウエイ排除を決め、さらに香港、ウイグル問題などでの中国の対応を非難している。英国世論でも電力供給を中国企業に依存する懸念が持ち上がる一方、中国が軋轢が高まる英国の原子力発電設備への投資を取りやめるのではとの観測も流れだした。

 英国は主要国で最も早く電力市場を自由化したが、その結果発電設備が減少する可能性が出てきたため発電設備新設を促す制度を導入している。一つは容量市場と呼ばれる、設備を保有あるいは新設すれば規模に応じて一定額が支払われる制度だ。もう一つは二酸化炭素を排出しない電源、原子力と再生可能エネルギー発電設備用に設定されている差額保証制度(CfD)と呼ばれる、発電した電気を一定額で購入する制度だ。どちらの制度も必要な費用は電気料金で賄われることになる。

 制度を導入し5年になるが、容量市場では設備の新設を支援するほどの金額は支払われていない。このままでは将来の発電設備が不足し停電の可能性も出てくるが、そんな中で英ボリス・ジョンソン首相が2030年の洋上風力設備設置目標を引き上げるとスピーチした。発電設備新設が進まない中、英国が世界一の導入量を誇る洋上風力発電設備を中国の手を借りずとも建設する案と評価されそうだが、洋上風力設備も中国抜きでは建設できず、結局中国に依存する案だとの批判が出ている。

自由化が招く設備減少

 巨額の設備投資を必要とする電力産業では、競合する企業が同じ場所に送配電線を2本敷設することは無駄になるため、最初に投資を行った企業が供給を自然と独占することになる。独占した企業が自由に高い料金を設定することを防ぐため考えられた制度が総括原価主義だった。

 原価に基づき一定比率の報酬を定め、規制当局が料金を認可する方式だ。企業にコスト削減のインセンティブが働くように査定されているが、競争が働かないとの批判もある。そのため電力産業の中で設備が複数ある発電部門を多くの企業に開放すれば競争が働きコストが下がるのではないかと考えられた。電力産業の自由化だ。

 主要国の中では、サッチャー首相時代の英国が1990年にいち早く電力産業の自由化を開始し国営であった発電事業を民営化した。その後小売りを含め全面自由化が行われたが、ドイツ、フランス、スペイン企業を含む大手6社が発電部門の主体を占めることになった。結果、自由化により発電設備が不足する懸念が出てきた。

 電気は厄介な商品で、常に需要量に応じた供給を行う必要がある。供給が過少でも過剰でも停電する。供給が多くなった時に蓄電装置に貯め不足する時に供給することは可能だが、その費用は発電コストを上回るのでまだ大規模に利用することは難しい。電気の需要は一年を通し、また一日の中でも変動する。冷暖房需要が増える夏場、冬場の昼間には需要量が多くなるが、貯めるコストが高いため需要量に応じ供給する発電設備を用意する必要がある。

 結果、夏場、冬場の一時期しか稼働しなくなる発電設備が出てくる。その稼働率は数パーセントだ。今年8月カリフォルニア州では太陽光発電設備からの供給がなくなる夕方に、熱波による冷房需要が続き供給不足で停電したが、その原因の一つは規制を行っている州政府が低稼働率、低採算の天然ガス火力設備の廃止を行ったことにあった。加州政府は温暖化対策のため採算が低迷している火力設備を大型蓄電池で代替すべく電力会社に指示したが、切り替えのタイミングが間に合わなかった。同州の廃棄予定の天然ガス火力の稼働率は表‐1の通りだが、今後の停電を避けるため数基を当面稼働することを州政府は決めた。

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