World Energy Watch

2020年10月28日

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中国の呪縛から逃れられるか

 昨年8月、米トランプ大統領がグリーンランドの購入に意欲を示した出来事があった(『トランプ大統領が何と言おうと、中国に頼るグリーンランド』)。大統領の関心は、グリーンランドに豊富に賦存する鉱物資源、中でもレアアースにあったのだろう。中国が世界最大シェアを握るレアアースを貿易戦争の武器として使えば、米国も無傷では済まない。中国のかつての最高指導者鄧小平が、引退後も影響力を保持していた1992年に国内視察後「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある」と述べた逸話は有名だが、中国は今世界のレアアース生産の8割以上のシェアを握っている。

 風力発電設備では、風車の回転数を上げるため増速機が使用されているが、最近では電磁誘導現象を利用する直接駆動のレアアース利用の磁石式の設備が増えてきた。保守点検が簡単になることから洋上風力での利用が多い。2019年世界の風力発電機導入量の3分の1を占めていたレアアース磁石式は、今後10年間でそのシェアを3分の2に拡大するとのコンサルタントの予測もある。

 磁石にはネオジム、ディスプロシウムなどのレアアースが使用されている。中国からの欧州へのレアアース磁石の供給が途絶えると洋上風力設備の製造はできなくなる。リサイクルによりレアアースを回収する都市鉱山も可能だが、その量は限定的だ。レアアースの供給源が広がるか、あるいは新技術が開発されなければ、英国の中国依存の状態は変わらないことになる。主要部品を中国に依存するのは英国だけの問題ではない。英国程の比率ではないが、洋上風力に力を入れ産業育成を狙っている日本にとっても重要な問題だ。

  
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