World Energy Watch

2020年9月29日

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 日立製作所が英国の子会社ホライゾン・ニュークリア・パワー経由取り組んでいたウィルヴァ・ニューウィッド原発(1、2号機合計276万kW)の開発を一旦停止すると発表したのは、2019年1月だった。当時ホライゾンのCEOは、「事業継続により一日あたり100万ポンド(1億3,500万円)の資金流出が続くので、英国政府との資金に関する合意得られるまで凍結する」と述べていた。

 今年8月には、ホライゾンは近々開発業務を再開する見込みと英国で報じられたが、予想に反し9月中旬日立は英国の原発事業からの撤退を発表した。ウィルヴァ事業に加え、計画されていたオールドベリー原発(合計276万kW)からも撤退するので、合わせて英国の電力需要の10数%を担う予定であった事業が宙に浮くことになった。

 現在英国で稼働している原発15基(合計約900万kW)は、2025年までに約半数が、2030年には大半が閉鎖される予定だ。温暖化問題に極めて関心が高い世論もあり英国政府は原発の新設に力を入れている。しかし、2018年11月の東芝のムーアサイド原発計画からの撤退に日立が続いたことに加え、今後進む中国資本による建設についても国内で懸念する声も高まっている。英国の原発建設はどうなるのだろうか。

(Evgeny Gromov/gettyimages)

 東芝、日立が英国の原発事業から撤退したように、民間企業による海外での原発建設は難しくなっている。その最大の理由は、工費増大と工期遅れのリスク負担が事業者には難しくなっていることだ。一方、ロシア、中国、韓国企業が建設している原発では工費、工期の問題はほとんどないようだ。露中韓企業の事業と欧米の事業では何が異なるのだろうか。その答えは工事経験の継続にありそうだ。

 日本国内での新設が中断し、海外事業からも撤退が相次ぐ日本企業は、建設の経験と技術を徐々に失う懸念がある。これから世界の原発建設はどう進むのだろうか、日本企業は一端を担うことができるのだろうか。

温暖化問題に関心が高い英国民

 昨年3月英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が行った調査では、英国民の35%が温暖化問題に非常に懸念をもっている。かなり懸念していると答えた人を加えると80%が懸念を抱いている。温暖化は人為的活動により引き起こされているとしている人は48%、人為的活動と自然の変化によるものとする人が40%。家庭で節電を行っている人は56%、車の使用を控えている人は51%もいる。

 世論もあり英国政府は多くの分野で低炭素化を進めている。内燃機関自動車の販売は2040年に終了し、輸送部門を電気あるいは水素に切り替える予定だ。古い建物が多いビル・住宅の改装、省エネ化も進めるが、2019年英国の二酸化炭素(CO2)排出量の3億5150万トン(速報値)の内5740万トン(16.3%)を占める電力部門のCO2削減が重要になる。

 英国は発電の大半を国産エネルギーの石炭で賄っていたが、採炭条件の悪化が著しくなった1980年代に石炭産業を民営化し高コストの坑内掘り炭鉱と石炭火力発電所の閉鎖を進めた。結果、電力部門のCO2排出量は、1990年の2億300万トンから大きく減少したが、英国が目標とする2050年純排出量ゼロのためには、さらに電力部門の低炭素化を進める必要がある。そのカギは原子力発電所の新設だ。BEIS調査では原子力発電支持の比率は35%、反対は23%、どちらでもないが38%だ。原子力発電に関する英国民の意見は図‐1の通りだが、原子力は信頼できると考える人が48%、そうでないという人は13%であり、原子力発電に対する英国民の支持は強い。

 原発は気候変動に役立つと考える人が33%に対し、そうでないが19%もいる。CO2を排出しない原発を気候変動に役立たないと考える人が結構多いのだが、今年英国機械エンジニア協会が行った調査では、原発を低炭素電源と理解していた人の比率は48%、男性60%に対し女性38%、18歳から24歳では26%しか理解しておらず、年齢が上昇するに従って理解度も上昇している。

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