World Energy Watch

2021年2月25日

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(MrJub/gettyimages)

 昨年10月に菅義偉首相により発表された2050年温室効果ガス実質排出ゼロ宣言を受け、マスメディアでは、「脱炭素」「グリーンイノベーション」に関する記事があふれた。脱炭素バブルと呼び3000兆円の世界中の環境関連投資資金の奪い合いがあるかのような書きぶりの記事もあり、投資先として環境関連有力銘柄を取り上げる記事もあった。

 首相がネットゼロを宣言し、政府がグリーンイノベーションを梃に経済成長を図る方針を明らかにすることにより、世界中から資金が集まり日本の脱炭素ビジネスが伸びるのであれば望ましいが、話はそう簡単ではない。その最大の理由は、バイデン政権の米国、コロナ禍からの復活予算の多くを脱炭素につぎ込む欧州委員会、再生可能エネルギー設備、電気自動車などで世界の工場を狙っている中国との競争に勝つ必要があるからだ。日本とは桁違いの巨額の資金を用意している国、地域との激しい競争だ。

 もう一つ問題がある。目標と実行の乖離だ。『50兆円超の環境関連新規市場』、『140万人の環境分野の新規雇用』。昨年12月25日に発表された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の目標と言っても、多くの人は違和感なく信じると思うが、これは2010年6月に当時の民主党政権により発表された「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~」中の「強みを活かす成長分野」の筆頭にあげられた「グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略」の2020年までの目標だ。何一つ実現していない。

 この新成長戦略の1ページ目は次のように述べている「失敗の本質は何か。それは政治のリーダーシップ、実行力の欠如だ。過去10年間だけでも、旧政権において10本を優に越える「戦略」が世に送り出され、実行されないままに葬り去られてきた」。その後には『2020年までに環境、健康、観光の三分野で100兆円超の「新たな需要の創造」により雇用を生み、国民生活の向上に主眼を置く「新成長戦略」である』と続く。本文には『我が国のトップレベルの環境技術を普及・促進し、世界ナンバーワンの「環境・エネルギー大国」を目指す』とある。

 デジャヴ(既視感)と言っていいだろう。実に20年間同じことを繰り返して来たといえる国が、またグリーンイノベーション戦略を打ち出した。今度は、2050年温室効果ガス純排出量ゼロ達成のためだが、その内容は実現可能なのだろうか。米国、EU、中国と戦えるのだろうか。

貧しくなり縮小する国

 アベノミクス効果については議論があるだろうが、我々の平均給与を見る限り効果はあったようだ。だが、その効果も息切れか。2013年から上昇を続けていた平均年収は2019年下落した(図-1)。落ち込んだのは給与だけではない。2012年から1.4を超えていた合計特殊出生率も2019年1.4を割り込んだ(図-2)。このままだと、世界の歴史で例をみない少子化が進むことになる。2100年には人口は今の半分以下約6000万人になり、英独仏の人口を下回ると予想されている。世界11位、先進国第2位の人口が支えてきた世界第3位の経済大国では当然なくなるだろう。

 

 お金では買えない幸福がある、経済成長は不要と主張する向きもあるが、それは持てる人たちの理論だろう。多くの人は収入増により生活が豊かになることを望んでいる。少子化の原因の一つは、結婚するための十分な収入がないと感じる男性が多くいることだ。日本の人口と経済が縮み、やがて消えていく国になるのを防ぐためには経済成長とそれに伴う収入増は不可欠だ。

 昨年末に発表されたのは、そのためのグリーン成長戦略だ。2兆円の基金も用意される。だが、この金額はバイデン米大統領が4年間でグリーンビジネス、インフラに投資するとした2兆ドル(約205兆円)、EUがコロナ対策予算の内温暖化問題解決に使用する予定としている2650億ユーロ(約32兆円)と比較すると、残念ながら桁違いに少ない。しかも、2兆円は10年間で支出される予定だ。年間2000億円の金額は日本の財政状態からは仕方がないことだが、欧米、さらにはクリーンエネルギー分野での覇権を狙う中国に対抗可能な規模ではない。経済成長を実現可能だろうか。

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