2024年7月22日(月)

World Energy Watch

2021年2月25日

必要なのは選択

 10年以上前から日本はグリーンイノベーションを呪文のように唱え、制度、金融などの枠組みを作り、風力発電、太陽光発電設備、蓄電池製造などによる成長を目指したが、この10年間の結果をみれば夢だったことは明らかだ。2000年代に世界の太陽光パネル生産量1位になったシャープは、いま台湾資本になった。シャープと一位を争ったドイツQセルズは破綻し、韓国企業に買収された。2019年の世界の太陽光モジュール生産企業ランキングは表の通りだ。成長したのは、中国企業だった。

 かつて日本企業が世界シェアの50%以上を握っているとされ、2010年の成長戦略で重点分野とされた蓄電池製造の今のランキングは図-6の通りだ。パナソニックが3位だが、工場は米国、中国にも展開している。8位トヨタ系PEVEを除ければ残りは中韓企業だ。環境ビジネスで成長を図るのは簡単ではない。成長の可能性がある分野をあげ注力すると宣言しても成功する訳ではない。日本企業の保有特許数も頭打ちになり4年前中国に抜かれている(図-7)。技術立国の地位は揺らいでいる。動員する資金の規模を頭に置き分野を大きく絞らない限り、国際市場で競争することは難しい。

 川崎重工、J-Powerなどの日本企業連合が先んじている水素輸送、アンモニア等での利用、さらに、燃料電池、全固体電池、小型原子炉開発の米国企業との協働などの分野では勝てるかもしれないが、全方位のグリーンイノベーションは無理だ。だが、そんな中で着実に有望イノベーション技術に出資する日本企業もある。最近、天然ガスから二酸化炭素排出を抑制し水素を取り出す米国のスタートアップ企業に、ビル・ゲイツ氏が主導するファンドの出資が報じられたが、出資者の中に三菱重工の名もある。脱炭素のために必要なのは全方向への注力ではなく、勝てる分野の選択と戦略だ。平成時代の成長戦略の繰り返しを止めなければ、米欧中との競争に勝ち抜くことはできないし、脱炭素社会も実現できない。

  
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