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Washington Files

2021年6月7日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

「職場の健康と安全確保」

 アメリカ全体の状況を概観すると、昨年末までは、大企業の多くが自宅勤務にシフトする傾向があったが、ワクチン接種の加速にともないコロナ感染拡大に歯止めがかかり始めた去る3月ごろから、職場復帰者が目に見える形で増加してきた。

 全米主要都市で3600棟のオフィス・ビルを保守・管理する「Kastle Systems」社が3月末までにまとめた実態調査によると、主要10都市では、全体の勤務者のうち、24.2%がオフィスでの通常勤務を再開した。また、ニューヨーク市役所関係だけでも、4月末までに全職員32万人中、約8万人近くが通勤し始めているという。

 しかし同時に、職場に戻ることに依然として不安を抱く勤務者が多いことも、別の調査で報告されている。

 アメリカ最大規模を誇る心理学者の全米組織「アメリカ心理学会American Psychological Association」が去る3月実施した調査によると、全体の49%の勤務者が「コロナ収束後も会社に戻ることに不安を感じる」と回答した。さらに、ワクチン接種者を終えた勤務者に限定した調査でも、48%が「職場で同僚たちと仕事をすることに違和感を持つ」と答えていることも明らかにされた。その背景として、ワクチン接種しても6カ月程度で免疫が減弱することや、様々なタイプの変異種の出現、子供を対象としたワクチン接種の不徹底などに対する懸念も指摘されている。

 そこで今後、出来るだけ早く業務正常化のため、雇用者側に求められるのが、安全な職場環境の整備、従業員の健康管理の徹底、家族に対する保健衛生・医療サービス面の改善などに向けたスピーディな対応、在宅以上に大きな職場勤務のメリットのPR作戦、などだ。

 すでに経営コンサルタント各社の間では、「コロナ以後」に向けた次のような措置を会社側に提案している:

  1. 経営上の最優先課題は従来のような「業績向上最優先」ではなく、まず「職場の健康と安全確保」とし、経営者は従業員の精神、肉体面を含めた「well-being」のために最大限の努力を払うべきである
  2. 労務担当者は今後も、連邦・州・市町村が定める健康保健面の条例や規定の確実な順守を心がけ、従業員が安心して仕事につける環境を保つ
  3. オフィス、工場、集配センター再開後は、洗浄の徹底、消毒液の適所設置、ワークスペースの再配置、会議、団らんなどの従業員の密集場所の配置換えなどが求められる
  4. 今後の変異ウイルス感染拡大に対する予防措置として、マスク、手袋などの医療用具の常備体制確保のほか、従業員、一般訪問者が職場に入る際の検温体制、発熱後の従業員の職場復帰の際の安全ガイドラインの構築を急ぐ
  5. 会社側と従業員との間で保健・安全管理面のコミュニケーションを密にし、オンラインなどを通じ最新データを共有する

 これらの指摘のほかに、長時間、がむしゃらに働く、いわゆる“猛烈社員”をよしとしてきたこれまでの「会社カルチャー」そのものを抜本的に見直すべきだ、との声も出始めている。

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