Washington Files

2021年5月28日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 トランプ・ファミリーめぐる一連の疑惑について、ニューヨーク・マンハッタン地検が「特別大陪審」による審理に入ったことが明らかにされた。もし、「起訴相当」の審決が下された場合、前大統領または親族の逮捕に発展する可能性もあり、関心が高まりつつある。

(bluebeat76/gettyimages)

 26日付の米ワシントン・ポスト紙は、検察側によるトランプ疑惑捜査について、スクープ記事を掲載した。

 同紙報道によると、2年以上にわたりトランプ・ファミリーめぐる疑惑を捜査してきたニューヨーク地検はこのほど、特別大陪審による審理を開始した。

 審理は極秘で進められているが、「複数の関係筋」の話として、検察側は「捜査はより進展した段階に入った」との判断に立ち、特別大陪審の場でトランプ前大統領および親族、または同氏が経営する不動産会社「トランプ・オーガニゼーション」に対する立件証拠を提示、陪審員たちの審決を仰ぐ決断を下した。もし、審理の結果、「起訴」の結論が出た場合、いよいよ裁判が待ち受けることになる。

 ニューヨーク地検はこれまでトランプ疑惑について、とくに①自己保有関連不動産を過大評価し、銀行および保険会社に損害を与えた②不動産税申告に際し、過少または不正申告した③「トランプ・オーガニゼーション」の経理内容に不正があった―などにしぼり、捜査を進めてきた。

 その過程で最近、二つの注目すべき動きがあった。

 ひとつは、去る4月28日早朝、FBI捜査官8人によるトランプ氏の個人弁護士ルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長の自宅及び事務所に対する強制捜査だった。この強制捜査で、検察側はジュリアーニ氏が使用していたスマホ、携帯、パソコン、フロッピーなど重要証拠物件多数を押収した。

 トランプ氏側近捜査ではこのほか、「トランプ・オーガニゼーション」で数十年にわたり“金庫番”を務めてきたアレン・ウイゼルバーグ氏の取引銀行から疑惑関連書類を押収したことも明らかになっている。

 もうひとつは、ニューヨーク地検捜査とは別に、トランプ関連疑惑の捜査を進めてきた州検察当局の動きだ。

 レティナ・ジェイムズ同州検事総長は今月18日、「これまで民事訴訟案件として内偵してきたトランプ疑惑について刑事捜査に切り替え、ニューヨーク地検のサイラス・バンス検事率いる捜査チームと連携して仕事を再開した」と発表した。同検事総長スポークスマンはさらに声明を読み上げ、「われわれはすでに、トランプ・オーガニゼーションに対し、当局の調査が民事の領域を超え、刑事事件に切り替えられたことを通告した。従って、これまで収集してきた情報は今後、刑事事件証拠として採用されることになり、ニューヨーク地検側との協力の下に積極的に捜査を進めていく」と述べた。

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、ジェイムズ検事総長の指示により、すでに部下の検事二人がバンス捜査チームに合流、本格的な捜査に入ったという。

 州検察当局はこれまで、①トランプ氏はシカゴに所有するホテルの土地代として地元信用銀行から1億5000万ドルの融資を受けた際、4800万ドル分の不動産税しか支払わなかった②ニューヨーク州郊外に所有する空き地について査定を故意に吊上げた上で州指定の「自然保護地」扱いとすることで大幅な州税控除を受けた―などの疑惑を追及してきた。

 しかし、これらの疑惑関連でこれまで、ウィーゼルバーグ氏、および案件を担当してきたトランプ氏次男、エリック・トランプ両氏に対し、情報開示を求めてきたが、協力を得られなかったことなどから、強制捜査の可能な刑事事件に切り替えたとみられている。

 今回の連邦地検特別大陪審の措置について、トランプ氏は「この捜査は、自分がトランプ・タワーのエスカレーターを降りてきたその日から始まったものであり、米国史上、最大の魔女狩りにほかならない……ニューヨーク民主党の息のかかった検察官による高度に政治色の強い捜査であり、大統領選で私を支持してくれた7500万人の有権者に対する侮辱行為そのものだ。これまで偉大なる会社を立ち上げ、何千人もの市民を雇用してきたにもかかわらず、これまで自分が得たものは、政治システムの濫用による不当な攻撃でしかない。彼ら(検察側)は存在もしない罪探しにもがいている」と猛反発している。

 今のところ、検察側が、通常の大陪審とは異なる形の特別大陪審審理に踏み切った真意については明確になっていない。しかし、そのタイミングに関しては、今回のスクープ記事を執筆したワシントン・ポスト紙のデイビッド・ファーレンホールド記者がMSNBCテレビに対し「地検によるトランプ氏の納税書類入手と関連したもの」として次のように語っている:

 「バンス検事は一昨年以来、トランプ疑惑のカギを握る納税書類の捜査を重視してきたが、大統領在任中は司法省などの横やりで行き詰っていた。しかし、バイデン政権発足後、今年2月、過去8年分の同氏の何百万ページにも及ぶ納税関連書類をようやく入手できたことで捜査に弾みがついた。大勢の検事たちが数か月をかけて一斉に書類点検作業に着手した結果、すでに多くの事実を把握したと思われる」

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