2022年10月6日(木)

Washington Files

2021年5月10日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 トランプ前大統領の個人弁護士を務めてきたジュリアーニ元ニューヨーク市長に対するFBI・ニューヨーク地検の強制捜査が始まり、最後は罪逃れのため本人がクライアントを検察側に売り渡すのではないか、との観測が広がっている。トランプ陣営にも衝撃が走っている。

ジュリアーニ氏とトランプ氏(REUTERS/AFLO)

 「ルディ・ジュリアーニは自らの罪を逃れるため必ずや、イバンカ、ドン・ジュニアそしてトランプを売り渡すrat outだろう」―去る4月30日、トランプ前大統領のかつての腹心といわれたマイケル・コーエン元顧問弁護士は、ジュリアーニ氏に対する強制捜査が始まったことを受けて、TVインタビューでこう語った。

 CNNテレビも5月4日、「ジュリアーニはトランプから寝返るかWill he flip against Trump?」との見出しの解説ニュースを流した。

 このほか、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなど主要紙も一斉に、トランプ・ファミリーに対する今後の捜査の展開に大きな関心を示し始めている。

 きっかけは、去る4月28日早朝、FBI捜査官8人によるニューヨーク市内マジソン・アベニューの同氏の高級アパートとパーク・アベニューの事務所に対する突然の捜索だった。

 地元紙などによると、FBIはこの日の急襲で、同氏の個人スマホ、パソコンなど電子機器8点や関連書類一式を押収した。

 強制捜査の容疑などは明らかにされていないが、ニューヨーク・タイムズ紙は、捜査当局筋の話として「ジュリアーニ氏がこれまでペトロ・ポロシェンコ元大統領などウクライナ政府当局者などと電話でやり取りしてきた通話やメール内容の全容把握が狙い」としており、この関連で別のFBI捜査官が同日、ジュリーアニ氏の側近とされる弁護士のビクトリア・トエンシング女史のワシントン近郊の自宅も捜索したことから、捜査はかなり大がかりなものになっている、と報じた。

 ジュリアーニ氏はこれまで、ウクライナ政府関係者といくつかのビジネス取引をしてきたほか、去る2019年、トランプ大統領の意向を受け、オバマ政権時代に任命されたマリエ・ヨナノビッチ駐ウクライナ大使(当時)を解任させるため同国政府に働きかけた疑いが持たれている。こうしたジュリアーニ氏の行為が、事前登録を義務付けられている「外国代理人登録法Foreign AgentRegistration Act」に抵触したというものだ。

 さらに、今回のジュリアーニ氏に対するFBI捜査対象が同氏のウクライナ・コネクションにとどまるとする見方は少なく、多くの専門家は、究極の狙いはトランプ・ファミリーの大規模な疑惑追及にあると見ている。

 FBIはトランプ氏が大統領在任中の昨年夏、さらに11月大統領選直後にも、ジュリアーニ氏に対する捜索令状を請求したが、大統領の圧力で司法省が令状執行を妨害したと言われる。しかし、今年1月20日、バイデン民主党政権が発足したことで、司法長官が交替し、今回の強制捜査につながったという。

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