2022年12月8日(木)

Washington Files

2021年5月10日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

ジュリアーニに対する強制捜査は、けた違いの重み 

 もともと、弁護士は法律上の「弁護士―顧客特権」で自らは保護されており、クライアントが捜査対象となっても弁護士自身が家宅捜索を受けることなどはあり得ない。しかし、弁護士の個人的行動自体が極めて犯罪性が高いと判断された場合はこのかぎりではなく、検察側は今回は、先ずはジュリアーニ氏に的を絞った捜査に乗り出したものとみられる。この点で、2018年5月当時、大統領の顧問弁護士だったコーエン氏がトランプ氏のセックス・スキャンダルもみ消し事件に関連してFBIの強制捜査を受けたケースとの類似性も指摘されている。

 ただ、トランプ氏自身「コーエンが私のためにやってきた仕事は全体のほんの一部にすぎない」と当時コメントした通り、コーエン氏がトランプ氏の活動に関して把握してきた情報には限りがあったとみられる。これまでのところ、FBIはコーエン氏に対するその後の捜査でも、さまざまな“トランプ疑惑”解明の糸口はつかめなかった模様だ。

 この点では、今回のジュリアーニに対する強制捜査は、けた違いの重みがある。

 ジュリアーニ氏は古くから検事畑の実績があり、1980年代には、東京地検にも比肩されるニューヨーク「南部地区検察」のベテラン検事としてマフィア幹部一掃の陣頭指揮で勇名をはせたほか、大物財界人の不正摘発などでも活躍した。その後、1990年代にはニューヨーク市長として犯罪撲滅、汚職警察官摘発に乗り出し、「ニューヨークを全米一安全な都市にした」として“世界一有名な市長”の異名をとったほどだった。

 しかし、市長退任後、コンサルティング会社を設立する一方、大統領選出馬の失敗などをへて、2016年大統領選の共和党全国大会のメーンスピーカーとして熱烈なトランプ支持演説をして以来、二人の関係は密接となった。その後は、大統領の最も頼れる個人弁護士として、ロシア疑惑をめぐる米議会弾劾審議などを通じ、トランプ氏徹底擁護のために辣腕を振るってきた。

 これまで明るみに出ることのなかったトランプ氏の“闇”の部分についても多くを知りえる立場だったジュリアーニ氏だけに、今回の強制捜査をきっかけに捜査の手が一気にトランプ・ファミリーに広がるとの見方が広がっている。

 「トランプ側近筋」はCNNに対し「大物とされてきたジュリアーニの自宅と事務所が捜索を受けたことで、トランプ前大統領およびその同志たちは、次に何がやってくるか不安に感じている。つまり、検察側はジュリアーニ捜査の延長線上でほかにもさまざまなことが起こるとのメッセージをトランプ陣営の関連人物たちに送った。

 とくに、ジュリアーニ個人の電子機器類が押収されたことで、司法省当局は第45代大統領とその関係者の本格捜査に乗り出す用意があることを意味しており、トランプ陣営に“恐怖心”を抱かせている」と語った。

 別のトランプ側近の一人は、「ジュリアーニ氏はベテラン検事として“攻め”には人一倍の力を発揮してきたが、高齢(76)で旧世代の人間であり、家宅捜索を受ける前に自分のスマホの重要情報を抹消するといった高度のIT技術を身に着けておらず、“守り”に決して強いとは言い難い」と論評、これらの個人使用の電子機器類が押収されたことで、災難が思わぬ所に飛び火しかねないとの懸念を示している。

 さらに、トランプ陣営が最も心配するのは、強制捜査をきっかけとして、検察側が起訴事実を固めた場合、ジュリアーニ氏が身柄拘束の汚名回避のため、司法取引でトランプ氏に関しこれまで知られなかった情報を売り渡すのではないかとの観測も出ている。

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