2022年12月5日(月)

Washington Files

2021年5月10日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

トランプ本人を裏切り、捜査取引に応じる 

 トランプ氏に関してはこれまで、①2016年米大統領選に際し、トランプ候補との密約でプーチン・ロシア大統領が情報機関通じ、虚偽情報を全米各地に拡散させヒラリー・クリントン民主党候補を敗北に追い込んだ②2020年大統領選を前に、バイデン民主党候補の次男が関係したウクライナにおけるビジネス取引について、同国検事総長らに強制捜査の圧力をかけた③元ポルノ女優とのセックス・スキャンダル対策のため多額のもみ消し料を違法に支払った④所得税の過少・虚偽申告を行った―などの刑事訴追案件のほか、大統領就任前の不動産事業にからむ29件もの訴訟案件が立ちはだかっている。

 このうち、刑事訴追案件は、大統領就任後に関係したものが多く、ジュリアーニ氏は大統領の個人弁護士としてそのほとんどのケースに精通していたとされる。

 この点について、ジュリアーニ氏も、トランプ氏大統領在任中に、自らの度重なる暴言や失態をマスコミに指摘され「個人弁護士解任」の噂が出るたびに、記者団の質問に対し「大統領は自分がどれだけ重要な事実を握っているかを熟知している」と答え、それゆえに辞任、解任はあり得ないとの私見を述べてきた。事実、トランプ氏も個人弁護士としてのジュリアーニ氏との関係を今日に至るまで維持してきている。そしてこのことは、ジュリアーニ氏がトランプ氏の様々な疑惑解明のキーパソンとなっていることを示唆している。

 しかし、今後、ジュリアーニ氏に対する捜査がさらに進んだ場合、超大物のクライアントであるトランプ氏をどこまで守り続けられるかについては疑問符もつけられている。

 途中解任されるまで同じ大統領弁護人として、ジュリアーニ氏を良く知る立場にあったコーエン氏は、CNNとのインタビューでこう語っている:

 「彼は、自宅とオフィスの捜索を受けたことで、明らかに神経をとがらせている。FBIと一緒になってトランプ関係の捜査に乗り出している『ニューヨーク南部地区検察』(SDNY)がいかに強大な権限を持っているかについては、かつて同じ職場の職歴がある彼だけに十分知り尽くしているはずだ。

 彼は、刑務所行きを望んでなんかいない……そもそも逮捕した容疑者を『捜査取引plea bargain』に応じさせ他の事件関係者について自白させるという強圧的手段は30数年前のSDNY現役時代に彼が編み出したものだが、今回、その同じ手法に自分がさらされることになるとは、実に皮肉なことだ。

 しかし、このまま、自分がこれまで生きてきた“黄金時代”を犠牲にしたいと思っていないことは確かであり、今後は、イバンカ(トランプ氏の娘)、ジャレッド(娘婿)、ドン・ジュニア(長男)そしてトランプ本人を裏切り、捜査取引に応じるだろう」

 また、「トランプ氏側近」はCNNに対し「どんなに忠誠を尽くしてきた人物でもブレイク・ポイントに直面することがある。ジュリアーニが裏切ったとしても、少しも驚くに値しない」と語り、コーエン氏と同様の見方を示している。

 一方、ジュリアーニ氏は強制捜査を受けた同日午後、Fox Newsテレビの著名キャスターとの応答の中で、SDNYの検事たちに言及「自分が検事だった当時は、マフィア一掃、麻薬摘発など大きな仕事をしたが、今の連中たちは何の業績を挙げてきたというのか。脅ししか知らない彼らが、インチキ犯罪で自分を有罪に持ち込むことなどできるはずがない」と猛反発した。 

 トランプ氏も、「彼はニューヨーク史上、最も偉大な市長だったし、偉大な愛国者だ。この国を愛してやまない人物なのに、検察の捜査対象にされるとはアンフェアだ」とFoxNews番組に出演し、終始、同氏の立場を擁護した。しかし、決して心中穏やかではないようだ。

  
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