Washington Files

2021年5月17日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 10年ごとに行われる米国勢調査局の最新データで、建国以来、アメリカの主役を演じてきた白人人口の減少と、逆にマイノリティ人口の増加による人種的多様化が一段と進んでいることが明確となった。政党政治への影響も注目される。

(Drazen Zigic/gettyimages)

 国勢調査局は去る4月26日、2000年から2019年の10年間の全米人口が、前回比7.4%増の3億3100万人になったと正式発表した。人口増は依然続いているものの、増加率そのものは、1900年代以来、最低となり、「日本、欧州並みの高齢化社会の前兆」として警戒の声も上がっている。

 州別に見ると、ヒスパニック、アジア系人口が多いテキサス、フロリダ、ノースカロライナなどの人口増が目立つ一方、ノースダコタ、ワイオミング、ミシガンなど白人の多い各州での増加率の低下が目立っており、この傾向は2030年、2040年代にはさらに顕著となるとみられる。 

 この点で注目されるのが、国勢調査局が今秋にも、人口統計に続いて発表を予定している人種別、世代別、都市部/農村部の人口分布などの変化ぶりを追跡した動態トレンドだが、すでに権威あるブルッキングズ研究所は去る1月、国勢調査局の推定データを下に統計専門家による興味ある分析データを発表している。

 その主なハイライトは、以下のようなものだ:

  1. 世界でも特異な「移動社会」と言われてきたアメリカだが、全世帯に占める年間平均の人口移動率は9.3%で、1947年以来、最低を記録した。1940年代から60年代には毎年、全世帯の20%、1990年代から15~16%、2000年代に入って13~14%と低下の一途をたどり、ついにひとケタとなった。しかも、世代別ではミレニアル世代(1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代)の低下が目立っており、アメリカが「定住社会」に近付きつつあることを示している。
  2. 高齢者と若年層間の人口増加率ギャップが顕著になりつつある。55歳以上の人口の増加率は2010-2020年の10年間に27%増となったのに対し、55歳以下人口はわずか1.3%しか増加しなかった。55歳以上の人口のうち、65-74歳のベビーブーマー世代の人口増加率は50%にも達している。
  3. 次世代を担う18歳以下の人口増加率は、北東部、中西部、内陸部諸州においてすでにマイナスに転じる一方、逆に首都ワシントンDCほかフロリダ、テキサスなど19州においてはさらに増加が目立っている。
  4. 人種別に見ると、白人人口は2010-2019年の10年間で1万6612人実質減少した。国勢調査局が1790年に調査を開始して以来、白人人口が減少に転じたのは史上初めてとなる。白人人口は1970-80年に1120万人増だったが、2000-2010年には280万人増と縮小し始めていた。しかし、現状より減少したことが確認されたのは今回が初めてだ。減少の要因としては、高齢化、出生率低下、結婚年齢の上昇などが挙げられている。
  5. 過去10年間で全米人口は1950万人増となったが、白人がマイナスだったのとは対照的に、ヒスパニック系人口が1000万人増、アジア系が430万人増、黒人320万人増などとなっており、今後将来にかけて、これらマイノリティ人口がアメリカ社会を支える「主たる成長エンジン」となることが明白になりつつある。

 今回の国勢調査結果は、アメリカの将来を占う上でいくつかのヒントを提供している。

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