「高齢化社会」への仲間入り
その一つは、これまで他の先進諸国とは対照的に「若さ」が際立った国であり、そのことが社会全体に躍動性を吹き込み、比類なき革新と爆発的エネルギーによって世界最強国へと押し上げてきた。しかし、今や80歳以上の人口が2歳以下の幼少人口を上回ったことに象徴されるように、日本や欧州諸国のような「高齢化社会」への仲間入りが始まった点だ。
人口増加には最低でも「2.1」の出生率が必要とされているが、昨年段階で「1.73」にまで低下した。日本(1.4)、ドイツ(1.5)、カナダ(1.5)、ベルギー(1.6)、英国(1.6)などより多少上回っているものの、高齢化が深刻化しつつあるといわれる中国(1.7)に肩を並べつつある。
しかも、建国以来、アメリカ社会の主役を担ってきた白人の出生率はすでに「1.6」以下になってきており、かつてのような「若い白人国」のイメージは遠のきつつある。
白人若年層が初めてマイノリティに
この点で興味深いのが、15歳以下の人種別人口トレンドだ。国勢調査局推定によると、2018年時点で白人若年層はすでに過半数を割り、49.9%となった。代わってヒスパニック系が60.4%を占め、白人若年層がアメリカ社会で史上初めて、マイノリティになり下がった。今後、世代交代が進むにつれて、マイノリティ化した白人年齢層は一段と拡大することが明白となり、早ければ、2050年代にも白人全体がアメリカにおいてマイノリティ人種へと変質していくことを裏付けている。
さらに今回の国勢調査では、あらゆる人種の中で、アジア系人口が最も早いスピードで増加していることも明らかになった。
Pew Research Centerの分析によると、2000-2019年の10年間にアジア系は81%の伸びを示し、1050万人から一挙に倍増に近い1890万人に増加した。増加率ではヒスパニック(70%)、黒人(20%)をはるかに上回っており、2060年には2000年時点の3倍以上の3580万人にも達すると予想されている。
しかし、かつて黒人人口の増加とともに、黒人に対する偏見や差別がアメリカ社会で広まった経緯もあるだけに、アジア系人口の顕著な増加とともに同様の人種的差別やヘイトクライムが一段とエスカレートしていくことが懸念される。
こうしたアメリカ社会における人口動態の変化がもたらす今後の政治動向も見逃せない。