中国の役割は、もっと重要だ。中国の指導者は、その増大する力は隣国への脅威ではなく、歴史も理解するとしてきた。欧州では1世紀前、指導者はナショナリズムの火を大火にせず使えると考えた。この夏を経て,習近平とその隣人は、アジアが腐食性の不信に陥らないようにすべきだ。中国がこれを率先する以上に平和的台頭への真摯さを示すよりよい方法はない、と論じています。
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エコノミスト誌が日中間の尖閣紛争に焦点を合わせて大きな記事を掲載したことは、この問題への同誌の危機意識の強さを裏付けています。ことによると、一般日本人以上の危機意識かもしれませんが、適切な強度の危機意識です。そして、尖閣問題は資源の問題などの経済問題ではなく、政治・戦略的な問題、アジアの将来の在り方を決める問題という性格を持つというこの社説の考え方は、きわめて適切です。
パネッタ米国防長官が訪中において日米安保条約の尖閣への適用を明言したことが安定性を強化した、との評価もその通りでしょう。パネッタ発言により、中国は、我慢を強いられることになりました。
当局のやらせによる対日略奪などといった反日暴動は、当局の指示で一応鎮静化しましたが、中国は、今後も尖閣周辺での海洋活動を強化し日本に圧迫を加えてくるでしょう。こういう力を前面に出した政策には、力で対抗するしかありません。対話で緊張を緩和するなどといった、安直な対応策があるかのように考えるべきではありません。抑止力をしっかりさせた上で対話をすることが、対話の成果につながります。
当面の措置として社説が提案している3つの提案は、大すじでは、賛成してよいでしょう。棚上げ提案は、存在しない問題を棚上げできないから、問題の存在を認めることになる、と言う意見があります。が、それよりも、従来の棚上げ論は、周恩来や鄧小平の一方的発言で、日本は合意していないのに、既成事実のように伝えられているところに問題があります。むしろ、当面は、問題が存在しないとするわが方の立場を留保しての司法解決の受諾であれば、日本の立場を損なうことにはなりません。
なお、日本の尖閣領有を「残酷な帝国形成」に根があるというのは、いささか納得できかねます。中国が、尖閣の日清戦争での奪取論を言い始めた中で、中国寄りに過ぎる言です。最近の習近平の発言で、日本は第2次大戦の結果をひっくり返そうとしているとの趣旨のものがあります。尖閣についてのその意味合いが分かりませんが、ロシアと同調した言い方であり、注意する必要があります。
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