ロンドン・マイニングというナゾの会社
リオ・ティントやBHPビリトンなど資源大手の出身者たちが作ったらしいこの会社はしかし、開示情報にその証拠を見出すのは難しいのに、何かにつけ中国との関係が言挙げされる。北京の意向を汲んで動くあたかもフロント企業であるかに――「中国がコントロールする」とか「中国のカネで動く」などと――言われてきた。
グリーンランド自治政府鉱物石油局が12年9月1日付で発表した探査権授与先企業のリストには、確かにロンドン・マイニングの名が見える。グリーンランド西部、イスカシアという永久凍土が始まる辺りに賦存する厖大な鉄鉱石を露天掘りしようという計画だ。掘った石をペレットという塊にするには確かに発電機が要るし、最も近い不凍港まで輸送するにも、100キロに及ぶパイプラインを敷かねばならない。
経費を下げるため中国人労働者を使うのではないかと、噂がしきりだ。ロンドン・マイニングはグリーンランドの最低賃金以下では雇わないなど約束したようだが、人口希薄な地だけに外国人労働力は必須と目される。それがいずれにせよ、中国人になると信じられているようなのである。
さらには米アルコア。アルミニウム生産加工で世界有数の同社は、グリーンランドの豊富な水力で起こす安い電気を当て込み、同地に大規模精錬所をつくる計画をもつ。その建設に、中国人労働者を3000人も送り込む計画があるとの報道を散見する。右の両事業に例えば5000人の中国人が労働者として入れば、それだけで人口の1割近くを占めかねない。
中国は事態がどう推移しても発言権を確保するためか、地域秩序を決める多国間協議体・北極評議会で正式オブザーバー資格を得るため、デンマークへの接近にも余念がない。12年6月には胡錦濤国家主席が同国を初めて公式訪問した。先立つ4月には、大臣級の徐紹史国土資源部長がグリーンランドまで出向いて行ってもいる。
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