米海軍大学のヨシハラ教授が、9月26日付Diplomatに「他の手段による戦争:中国シーパワーの政治的活用(War By Other Means: China’s Political Uses of Seapower)」と題する小論文を寄稿し、中国の総合的な海洋パワーが政治目的のため有機的に活用されている現状に警鐘を鳴らしています。ヨシハラの主張の要点は以下の通り。
すなわち、中国のシーパワーは、単に、海軍艦船、地上配備の戦闘機、爆撃機、対艦弾道ミサイルだけでなく、非海軍、非軍事の海洋警察力等をも含む総合的なものだ。中国は自国権益を守るため多種多様の海洋能力を保有しており、それにより同国の選択肢の幅は拡大している。
中国は、南シナ海のより弱小な諸国に対し、軍事・非軍事の海洋パワーを使い分けながら、政治的に活用している。その目的は、対艦弾道ミサイルを含む様々な海洋パワーを見せ付ける「砲艦外交」によって、相手国の政治的意志を挫くことにある。
最近のフィリピンや日本との島嶼を巡る対立の際も、民生部門の非軍事船舶を長期間派遣しているが、中国によるこうした執拗かつ忍耐強い長期にわたる「海洋消耗」戦は相手方の戦略的疲労を招き、最終的に中国の利益を拡大する。
しかも、繰り返される中国の挑発は米軍が介入するにはあまりに小規模であるため、中国は、一方で米国の意志の強さをテストしつつ、米国の同盟国、友好国に対し、米軍による軍事介入への信頼感と中国に対する抵抗の意志を失わせることが可能となる。
中国海洋パワーの増強は東南アジアにとって大きな問題であり、だからこそ、米国は最近の「アジア回帰」政策により、ASEAN諸国に対し、米国が南シナ海地域の安定を引き続き維持することを保証した。少なくとも今後10年間、中国が南シナ海から米軍を追い出す力を獲得する見込みはない。
しかし、今後中国米国とその同盟国、友好国は次の4点を念頭に置く必要がある。
1. 米国とその同盟国は南シナ海地域諸国の海洋パワー増強に関する自助努力を支援すべきだ
2. 米国は中国の海洋パワーの動きを追跡するための地域規模の努力を支援すべきだ
3. 米国は対艦巡航ミサイル部隊を含む海洋攻撃力の配備のための計画を作るべきだ
4. 米国は長年にわたる西太平洋の制海権が失われる可能性を再検討すべきだ