世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年7月14日

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 6月20日に第1回投票が、6月27日に決選投票が行われたフランスの地方選挙では、マクロンの与党「共和国前進」が大敗、ルペンの国民連合が伸び悩んだ。特に決選投票ではその傾向がより明確となった。国民連合が一回目の投票で唯一首位に立ち、初の地域圏議会議長を取ることが予想された南仏地域圏では、左派候補が立候補を辞退し、中道右派共和党の現職議長の支持に回ったため惨敗した。

 結果として、13の地域圏の内、共和党系が7、中道左派の社会党系が5の地域圏議会議長を獲得し、既成政党の復権を印象付けた。地域圏議会選挙は、比例代表制で行われるので、国民の政党に対する支持率を把握する有力な指標となる。ただ、今回の結果が、国民のポピュリズム離れを意味し、来年の大統領選挙にどこまで影響するかは、過早な結論は出せない。

 この選挙は、地域性に基づく政党を選ぶ選挙であるので、もともとしっかりした地方組織を有しないマクロンの「共和国前進」が敗北するのはある程度予想できたことである。また、国民連合も、労働者階級を支持基盤とすることから、低投票率が響いたということも言えよう。ルペンがイメージのソフト化を図ったことが、むしろ若者や労働者階級の関心を失わせた面もあろう。

 共和党を離党し大統領選挙を目指すベルトランは、国民連合が強いと言われた選挙区で圧勝し、来年の選挙は自分とマクロン、ルペンの三つ巴になる、と述べた。現時点での世論調査でもマクロン、ルペンとベルトランの間には6%程度の差があり、そうなるためには共和党がベルトラン支持で一本化する必要がある。ベルトランとペクレスは共和党を脱退しており、党自体も誰を単一候補にするかで意見がまとまらない。同じことが左派の社会党や緑の党についても言える。今回の選挙で勝利した、同じく中道右派のぺクレスやヴォーキエらが易々とベルトランに譲るとは思えず、調整がつかなければ共倒れとなり、結局、マクロン・ルペンの決選投票となる可能性は依然として高い。

 候補者個人を選ぶ大統領選挙では、知名度が大きな要素ともなり、都市を中心に3割近い岩盤支持層を有するマクロンとしては、コロナ対策に成功することが依然として人気回復の鍵であり、また、共和党対策を意識することになろうが、これまでの戦略を大きく変える必要は感じていないのではなかろうか。

 地方選と大統領選の違いは大きい。つまり、大統領選は政党よりも個人に関する戦いになる。今回の投票でも、大多数は支持政党に投票し、大統領や政府に関する評価と見ていた有権者は5分の2以下だったが、大統領選ではこれが逆になる。例えば、昨年の自治体選挙ではLREMも国民連合も得票率は低かったが、世論調査では2022年の大統領選で決戦投票に出るのは、2017年の時と同様、未だにルペンとマクロンが挙げられている。

 マクロンの望みは、左派も右派も地方選での勝利にも関わらず内輪もめを続け、マクロン打倒の力を掘り崩してしまうことだ。もっとも、彼は大統領選までの10か月間に多くのことが変わりうること、そして最後に現職の大統領が再選されたのは2002年のシラクだったことも想起すべきだろう。

  
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