世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年6月2日

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 1年後のフランス大統領選挙を控え、5月15日付のEconomist誌は、既成政党である社会党及び共和党の凋落と決選投票におけるマクロンと極右ポピュリストのルペンの接戦を予測している。

andriano_cz / iStock / Getty Images Plus

 来年(2022年)のフランス大統領選挙に関する現時点での分析予想をまとめれば、ポピュリズムの風潮を背景に社会党等の左派及び共和党系の右派の候補者は有権者の十分な支持を得られず、結局は、2017年と同様、マクロンとルペンの決選投票となり、国民の右傾化や左派票のマクロン離れにより、ルペン勝利の可能性も出てきているというものだろう。

 4 月に左派系のシンクタンクが同様の趣旨の調査結果を発表したこともあり、このような見方が、メデイアにもシェアされている。

 伝統的支配政党が求心力を失っている現象は、ポピュリズムが台頭している欧州に共通の現象ともいえよう。冷戦の終了により左派と右派が政権を争うイデオロギー対立軸が政治的求心力を失い、急速に進展したグローバル化の下で生ずる格差を背景に経済的に恵まれない大量の無党派層が形成され、その受け皿として、既存の政党や政策を批判し改革を訴えるポピュリスト政治家が台頭するのである。現在のフランスの内政は、その典型例といえる。

 尤も、フランスにおいてこのような現象が顕著になったのは最近であり、2017年までのオランド政権では、社会党は議会でも安定多数を確保していたのであるが、低迷する経済や雇用を市場原理に基づく政策で活性化せざるを得ず、これが上手くいかず国民的人気も凋落しオランドは再選を断念し、党内ポリティックスでより左の後継者が選ばれたことに反発し離党したマクロンが国民の支持を得て、決選投票では大差でルペンを下すに至った。

 しかし、マクロンは、その独善的な政治スタイルや必要ではあるが強引な経済改革により黄色いベスト運動を招き、更にはコロナ対策に手間取ることにより国民の期待感を裏切ってきている。他方でルペンは、党の創設者の自らの父親を除名しEU離脱ではなく改革の方針に転換し、ユーロの廃止を撤回、党名も変える等極右のイメージを払拭する努力を重ね、反テロ、反移民、反イスラム感情による国民の右傾化を追い風として支持基盤を広げて成果を上げている。

 マクロンは、共和党中道派と組み、決選投票ではルペンを共通の敵とする左派の票を期待しているが、記事指摘の通り、国民の右傾化、共和党右派とルペンとの連携の兆し、また共和党と手を組んだことで決選投票での左派の票が期待できない恐れも生じ、かなりの接戦となる可能性が高い。もちろん、選挙まで1年あるので、思わぬ候補に国民の期待が盛り上がる2017年のマクロン現象のようなことが起る可能性も排除はできない。いずれにせよ、マクロンにとってはコロナ対策の成功が大きな鍵であり、また、環境政策で都市の浮動票の獲得を目指し、治安・移民政策では強硬策によりルペンに対抗することになっていくのであろう。

  
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