世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年11月25日

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 今回の米国の大統領選挙は、再びポピュリズムに焦点を当てることとなったが、米国のポピュリズムはトランプ以前からあり、トランプ後も何らかの形のポピュリズムが続くと思われる。

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 ポピュリズムの原動力は経済的不平等とエリートへの怒りである。

 経済的不平等については、米国で過去40年間経済は顕著に発展したが、その間実質賃金は上がっておらず、特に教育程度の高くない者の実質収入は減ったという。米国経済はグローバル化とデジタル技術、オートメーション技術に支えられて発展したが、教育程度の高くない者はこの経済発展に参加できず、その恩恵を受けることができなかった。このようにして経済発展に取り残された形のグループが社会、政治体制に幻滅を感じ、ポピュリズムを支持するようになったと考えられる。

 それはエリート、つまりエスタブリッシュメントに対する怒りと裏腹である。取り残された人々は、エスタブリッシュメントは経済発展に参画しその恩恵を受けたのに自分たちは疎外されたと感じ、エスタブリッシュメントに対する怒りが生じたのである。このような経済的不平等とエリートに対する怒りは、トランプが去っても消えるものではなく、米国のポピュリズムはトランプ後も続くと考えられる。

 バイデンは大統領選挙の勝利演説で国民の和解を呼び掛けた。トランプは対立や分裂を煽るような発言を繰り返していたが、バイデンが大統領になればそのような発言はなくなるだろう。しかし、上記のような経済的不平等とエリートに対する怒りが続く限り、和解は困難である。バイデンが真に米国民の和解を図ろうとするのであれば、対立の原因である経済的不平等の軽減に取り組まなければならない。しかし、経済的不平等は構造的な性格のものであり、その軽減は容易でないだろう。

 ポピュリズムは米国だけの現象ではない。欧州では以前よりポピュリズムの動きが見られたが、2011年の国家レベルの債務危機をきっかけにポピュリズムへの支持が急拡大した。現在ではイタリアでポピュリスト党の「五つ星運動」が連立政権を組んでおり、ハンガリーではポピュリストのオルバンが首相を務めているほか、フランスではマリーヌ・ル・ペンがポピュリスト党の「国民連合」(前「国民戦線」)の党首を務めている。欧州以外ではブラジル、インド、フィリピン、ポーランド、トルコでポピュリズムが活発である。

 このようにポピュリズムは世界的現象であり、今後とも先進地域、開発地域を問わず、国民の不満のはけ口、それにつけ込む政治家の動きとして広まりを見せると思われる。

  
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