中山間地の物資輸送
海の次は山だ。広島県の山間部である中国山地地域は、少子高齢化によって、人口の50%以上が65歳以上の高齢者になった「限界集落」が多数存在する。そうした地域で問題となるのが、やはり物資輸送の問題だ。高齢化が進めば、自ら自動車を運転して買い物に行くこともままならなくなり、ワゴン車などによる移動販売が食品や日用品を購入する重要な手段になっている地域もある。
このような中山間地域である北広島町で、自動配送ロボットによるラストワンマイル物流の効率化を実現しようとしているのがYper(イーパー、東京都渋谷区)だ。社長の内山智晴さんによれば「自律走行をするだけではなく、機体が荷物の積み下ろしまで自動で行うことができるのが特徴です」。
利用シーンとしては、①日用品をネットで注文する②商品が地元の商店に届く③地元の商店で生鮮食品を購入④日用品と生鮮食品を混載して、購入者のに届ける、というものだ。10月25日から、地元スーパー「フレスタ サンクス店」から北広島町役場の約300メートルの間で実証実験を行う予定だ。
「北広島町で配送業者さんにヒアリングしたところ、ラストワンマイルの担い手が不足しているということでした。また、遠隔地に住む家族がネットで通販代行をしたいと思っていることもわかりましたので、配送の省人化と自動化を目指しています」と、内山さん。収益モデルとしては、配送会社がイーパーの開発した機体の利用料金を支払う、利用者自身が追加の配送料金を支払うといった形が考えられる。
実はYperの内山さんと、エイトノットの木村さん、海と山で提携することができなかと考えているそうだ。Yperの機体をエイトノットの自律航行船にそのまま乗せてしまえば、荷物の積み下ろしの手間が省けるというわけだ。
〝よそ者+スタートアップ〟の力を借りて進めていくこのスキームは、地域課題を解決に向けた新しいモデルとなる可能性を秘めていると言えそうだ。
もう一つ、今回の「D-EGGS」プロジェクトに事務局およびアクセラレーターとして参加する、創業期から支援するベンチャーキャピタル・サムライインキュベートのManager佐藤建明さんは、図らずも広島県出身。「このような形で地元に貢献できるのは嬉しいです」と話す。故郷を離れてしまったけれども、仕事を通じて故郷に貢献する。このような形も地域課題の解決に向けた新しいモデルの一つになるように思える。「D-EGGS」プロジェクトは、11月中旬に最終成果発表が行われる。