Wedge SPECIAL REPORT

2021年11月4日

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出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙『日経ウイークリー』記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)客員研究員を経て、フリー。著書に『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』 (角川新書)など多数。

 フイ君は現在、コンビニ・スイーツの工場で週4日、午後7時から午前1時まで働いている。時給は最低賃金をわずかに上回る860円で、午後10時以降は25%の深夜手当こそつくが、月収は10万円に満たない。

「前は朝までの夜勤もやっていたけど、コロナで仕事が減り、今は工場が午前1時で止まってしまう」

 フイ君の実家はベトナムで農業を営んでいるが、家は貧しく、息子に仕送りする余裕はない。150万円に上った日本への留学費用も、半分以上は借金に頼った。その借金はバイトで返済できたが、学費を工面するためには今の収入では足りない。

 最近までフイ君は、宅配便の仕分け現場で週3日、午後7時から翌朝4時まで夜勤をやっていた。スイーツ工場と同様、日本語が上達していなくてもできる仕事で、留学生バイトなしでは回らない職場だった。2つのバイトの時間を合わせると、留学生に認められる「週28時間以内」の就労上限を大幅に超えた。しかし、違法就労しないと生活が成り立たないのだ。

 フイ君のようにバイトで学費や生活費をまかなう留学生には、本来「留学ビザ」は発給されない。だが、政府の「留学生30万人計画」のもと、経済力のない外国人にもビザ発給が認められてきた。出稼ぎ目的の偽装留学生までも受け入れ、底辺労働に利用するためだ。

 低賃金の外国人労働者としては「技能実習生」が知られる。ただし、実習生の受け入れは仲介先の「監理団体」へ支払う斡旋手数料が伴い、企業には費用がかさむ。そのため、より安価な留学生に頼る企業が多い。

 2012年には18万919人だった留学生の数は、19年末までに34万5791人と2倍近く増えた。とりわけベトナム人留学生は、12年からの7年間で9000人弱から約8万人へ9倍にも膨らんだ。

 コンビニ弁当の製造工場に留学生バイトを斡旋している人材派遣業者幹部、山口浩一さん(仮名)が言う。

「派遣先の弁当工場は3交代で24時間稼働しているが、夜勤シフトは半数以上が留学生だ」

 山口さんの会社では、午後7時半に留学生を事務所前に集合させ、送迎バスで工場まで連れていく。工場は町から離れた場所にあるため、片道2時間もかかる。仕事は午後10時から午前6時まで、1時間の休憩を挟み徹夜で続く。立ちっぱなしで、弁当の容器におかずなどを延々と詰めていく単純な作業である。仕事が終わると、再び2時間かけて町まで戻る。その後、留学生たちは睡眠も取らず、日本語学校などの授業に出席する。

便利なコンビニ弁当
〝違法就労〟の現実を見よ

 なぜ、弁当工場は24時間稼働する必要があるのか。

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Wedge 2021年10月号より
人をすり減らす経営は もうやめよう
人をすり減らす経営は もうやめよう

日本企業の“保守的経営”が際立ち、先進国唯一ともいえる異常事態が続く。人材や設備への投資を怠り、価格転嫁せずに安売りを続け、従業員給与も上昇しない。また、ロスジェネ世代は明るい展望も見出せず、高齢化も進む……。「人をすり減らす」経営はもう限界だ。経営者は自身の決断が国民生活ひいては、日本経済の再生にもつながることを自覚し、一歩前に踏み出すときだ。

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