「現状維持」と「住民の意思」への言及に注目した。特に「台湾の将来は台湾の住民の意思により決定されねばならない」との発言は非常に重要である。これこそ台湾問題の最重要の原則である。
それは習近平が演説で言及する「領土保全」と並んで国際社会の大原則であるべきだ。そして台湾の場合「住民の意思」こそがより重要である。「領土保全」は抑々戦争などを通じ外国が領土を拡大、変更することを規制せんとする原則であり、台湾はそのような問題ではないように思える。
香港の二の舞を踏まない米国の構え
近年の米国防省のウォー・ゲームによれば、米国などの軍事力は中国に対応するに十分でないとの結果になっているという。台湾は防衛力を高める必要があり、また米国や同盟国は抑止力、特に海軍力の強化を図っていくことが重要である。更に重要なことは、香港のように、西側が油断した隙に中国が素早く巧妙に既成事実を築くことを許さないことである。
10月7日付のウォ―ルストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、米海兵隊などが台湾で少なくとも1年にわたり台湾の陸上や海上部隊を訓練していると報道した。
これにつき米国防省は声明で「具体的な作戦や関与、訓練についてコメントしないが、我々の台湾支援や台湾との防衛関係は現状の中国の脅威に合わせたものだ」、「米国は台湾問題の平和的解決を引き続き支持していく」と述べた。
米国の1979年台湾関係法は、台湾の自衛力維持を目的に「器材」と並んで軍事訓練などの「役務」を提供すると規定している。米国としては、中国の台湾に対する挑発的な行動がエスカレートしていることと、米国の中に台湾防衛の戦略的曖昧政策の明確化を求める議論があることにも配慮して、今回斯かる台湾軍訓練を事実上認めることにしたのではないか。また、中国には一定のシグナルを送ったことになる。
10月8日、中国外務省報道官趙立堅は、米国は台湾との軍事的関係を止めるべきだ、微妙な問題であることを認めるべきだと従来の発言を述べるに留まり、強硬な対米批判はしなかった。中国の反応は抑制的だったと受け取られている。国際世論の対中悪化や対米関係への影響を恐れたのかもしれない。