この記事が出ると同時に、ホワイトは競合紙The Australianの取材に答え、次のように述べています。中国が大きくなればなるほど、日本は、米国が守ってくれるか自信をもてなくなる。なぜなら「中国の国力増大に見合って、米国にとっては日本防衛のコスト、リスクが上昇する」からだ、と。要するに、日本が豪州へ接近意欲を見せるのは中国に対する懸念のみを理由とするものなのだから、豪州は話に乗るべきでないと言うことです。
さらに、豪州の利益を、米国とも中国とも良い関係を保つところに見出すホワイトは、米国に対しても、中国と張り合うべきでなく、むしろ同等と認めて「コンサート・オブ・パワーズ」の関係へ進むべきだと促し、そして、豪州はいずれからも利益を得る立場につくべし、との立場です。
ホワイト流の発想は、太平洋における力のバランスは米中の協調以外によって図れないとみなし、日本があれこれもがくことはむしろ均衡を阻害するノイズだと見るところに特徴があります。ホワイトは豪州のみならず英語圏の一定層に固定読者を抱える論者ですから、今後もその発言に注意を要します。
もちろん、豪州がホワイト流の考え方一色に染まっているなどというわけではなく、例えば、保守系のジョン・ハワード政権で国防の要職にあったジェニングズは、12月14日付のThe Australian紙で、「日本との軍事的緊密化を図ることは、地域の安全保障への貢献として実際的で、効果的だ。日本はこれで安心を得られる。さもなくば単独行動に出て地域に不安をもたらすかもしれないところ、その心配がなくなる。豪州には技術面での協力から得られるものがあり、双方の国防力を高められる。一時停止ボタンを押さねばならないどころではない。もっと速く前進し、関係緊密化を図るべきなのだ」と、ホワイトに真っ向から反論しています。日本としては、こうした日豪関係強化論者たちの要求に応えることで彼らをエンカレッジし、日豪関係強化の環境を一層醸成していく必要があります。
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