文部科学省の調査によると、都道府県や政令指定都市の7割が何らかの形で学校ネットパトロールを行っており、半数以上が民間企業やNPOに委託している。東京都教育庁は09年度より、約2000万円の予算をかけて、都内全公立学校2200校を対象に、ネット検索や書き込み削除のノウハウを持つピットクルーにネット監視を委託している。
専従の監視員3~4人が不適切な書き込みを常時監視。危険性や緊急性に応じて書き込みを高・中・低の3つのレベルに分け、すぐに対応が必要なものは都教育庁に都度連絡する。連絡を受けた都教育庁から、区市町村教育委員会を通じて学校(または直接都立学校)に連絡が行き、書き込んだ本人を特定したうえで直接指導を行う。
同社はホームページで「7300校以上の学校を対象とした調査実績!」と謡っているが、実効性に疑問を投げかける声もある。法人向けネット監視を手がけるドマーニ・エコソリューションズの鈴木正秋社長は「1校1万円の計算で1年間ネット監視を引き受けたらビジネスとして成り立たない。3~4人で2200校を対象に監視するのは到底無理」と話す。同社は子どもや女性など個人向けのネット監視も提供しているが価格は1回3万円。オプションの削除依頼も含めれば20万円になることもあるという。
ネット監視に10億円つぎ込むディー・エヌ・エー
都教育庁の担当者は「生徒の間で先生に監視されているという意識が広がり、不適切な書き込みは明らかに減っている」とネット監視の効果を強調するが、実態は大きく異なる。ネットいじめの相談を受け付けている全国webカウンセリング協議会への相談件数はむしろ増加している。
「報告件数減少=ネットいじめ減少」と考えるのは早計で、同協議会の安川雅史理事長は「子どもたちは、パスワードが必要なソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)など会員制サイトを使うようになっており、外部からは書き込みが見えなくなっているだけ」とネットいじめの密室化を指摘する。
SNS業界も対策に乗り出している。会員制交流サイト「モバゲー」を運営するディー・エヌ・エーは会員同士が利用するメールや掲示板への1日数千万以上にのぼる投稿をコンピュータと人海戦術で監視。他人を誹謗中傷する単語などをシステムが拾い出し、悪質性の高い投稿は自動的にブロック。機械的に判定できないものは東京と新潟に常駐する400人の社員が、24時間365日目視によりチェックし、投稿があってから数分以内に処理する。子どもの利用も多い同社は、企業イメージの悪化を恐れ、年間10億円をネット監視に投じている。