2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年2月1日

 それを行なう責任は、豪州のような善意の中堅国ではなく、直接の当事国である中国、日本、米国、ベトナム、フィリピンにある。しかし、この問題を改善するには、まず中国、そして領有権を主張する他の関係国、とりわけベトナムが、船舶の危険操行や挑発的な海洋作戦行動を海洋権益推進の政策ツールとして使うのは控える、という基本的な政治決定を行なうことが必要になるが、目下の情勢から言って、中国近辺の海域は、今年もまた不穏なものになる可能性が高い、と述べています。

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 メドカーフは、豪州の元情報分析官、元ジャーナリスト、元外交官で、豪州の外交・安全保障問題に関しては一定の発言力を持つ人物と思われます。

 中国人民解放軍海軍との交流による信頼醸成は、関係国海軍にとって「長年の夢」であり、こうした交流を実施すべし、豪州はその面でイニシャティブを発揮すべし、とのメドカーフの主張に反対する者はいないでしょう。この論説は、正論ではありますが、 意地悪く言えば、陳腐とも言えます。

 最大の問題は、メドカーフ自身指摘しているように、中国がその気になるか否かです。しかし、現在の人民解放軍幹部に、そうした意欲は見られません。論説に欠けているのは、中国海軍をこの種の軍事交流に参加させるため、中国側に如何に働き掛けるかについての具体論です。

 ただ、それでも豪州が本気でそのような交流についてイニシャティブをとるのであれば、日米はこれに乗るべきでしょう。現在、中国海軍側がこの種の交流に関心を持たないのは、恐らくその「弱さ」ゆえと思われます。しかし、逆に中国側が強くなってしまえば、軍事交流をこちらから持ち掛けようとしても、手遅れになる可能性があります。そうであるならば、僅かな可能性であっても、トライするしかないということになるでしょう。

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