2022年10月5日(水)

Wedge OPINION

2022年1月22日

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長尾 賢 (ながお・さとる)

米ハドソン研究所 研究員

学習院大学大学院にて博士号(政治学)取得。米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員などを経て2017年から現職。日本戦略研究フォーラム上席研究員、スリランカ国家安全保障研究所上級研究員、未来工学研究所特別研究員なども兼任。著書に『検証 インドの軍事戦略』(ミネルヴァ書房)。

「Wedge」2022年1月号に掲載され、好評を博したオピニオン「中国と本気で戦うインド 日本はどれだけ理解しているか」の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
 
標高5000㍍を越える印中国境地帯では、9万人ものインド軍が投入された。緊張は今も続いている (AFP/AFLO)

 今、中国を巡る安全保障環境が厳しさを増している。2021年10月には約200機もの中国の軍用機が台湾に接近、台湾空軍が警戒する防空識別圏に侵入した。同じく10月には中国とロシアの艦艇10隻が日本海側から津軽海峡を通って太平洋側に入り、東京都の伊豆諸島付近を経由して大隅海峡を抜け、それぞれ中国とロシアに帰るという、日本一周の航海も行った。中露の爆撃機も連携した行動をとっている。日本周辺における中国軍の行動の活発化は近年、顕著なものがある。

 ただ、中国の軍事活動の活発化は日本周辺だけの現象ではない。南シナ海やインド洋でも活動が活発化しつつある。そして、今、実際に中国と戦闘をして、死傷者を出している地域もある。インドと中国の国境地帯(国境が未画定になっている実効支配線を含む)である。この地域での緊張は明らかに無視しえないレベルに達しつつある状態だ。今、印中国境地帯で何が起きているのだろうか。

ほぼ戦時下の印中国境
中国は最新兵器も展開

 今に続く緊張が始まったのは20年春、中国軍5000人が印中国境の複数箇所で、同時にインド側への侵入を開始してからである。侵入した中国軍は、そこに陣地を築き居座った。6月に入り、インドと中国の当局が話し合い、中国軍の撤退が合意されたが、その撤退の際に、中国軍がインド軍を待ち伏せし、両軍1000人規模で衝突する事態に至った。

 こういった衝突は通常、その場にあるもので戦う程度のものである。17年にも両軍は衝突しているが、素手や周辺の石を投げ合うものであった。しかし、20年の時は違った。中国側は、多数の針が出た鉄の棒などを大量に準備し、インド兵を激しく殴打、インド側だけで20人の死者と76人の負傷者、中国側も死傷者を出す事態に至ったのである。

広大な印中国境地帯は、その多くが係争地域となっている
(出所)各種資料よりウェッジ作成 写真を拡大

 この事件の後、印中両軍は、国境地域で大規模な戦闘態勢に入った。インドと中国の国境は、……

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Wedge 2022年1月号より
破裂寸前の国家財政 それでもバラマキ続けるのか
破裂寸前の国家財政 それでもバラマキ続けるのか

日本の借金膨張が止まらない。世界一の「債務大国」であるにもかかわらず、新型コロナ対策を理由にした国債発行、予算増額はとどまるところを知らない。だが、際限なく天から降ってくるお金は、日本企業や国民一人ひとりが本来持つ自立の精神を奪い、思考停止へと誘(いざな)う。このまま突き進めば、将来どのような危機が起こりうるのか。その未来を避ける方策とは。“打ち出の小槌”など、現実の世界には存在しない。

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