アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで1月17日、イエメンの親イラン反政府武装組織フーシ派のドローン攻撃を受けた事件は、エネルギー資源の宝庫ペルシャ湾を一気に緊張させた。戦闘が激化すれば、高止まりにある原油価格がさらに高騰する懸念もある。背景にはイエメン内戦でUAE支援の〝謎の軍団〟がフーシ派の支配地を奪回した戦況の変化があるようだ。
サウジの石油ストップの悪夢再来
地元警察などによると、この攻撃でタンクローリー3台が爆発、アブダビ国際空港でも小規模な火災が発生した。インド国籍の2人とパキスタン国籍の1人が死亡した。フーシ派が「軍事作戦を実施した」と発表、内戦に介入しているサウジアラビア主導の「連合軍」が直後にイエメンの首都サヌアの同派拠点を報復爆撃した。
タンクローリーの爆発現場は国営石油会社の燃料貯蔵施設の近くだった。2019年9月には、サウジアラビアの石油施設2カ所がやはりフーシ派のドローン攻撃を受け、同国の石油生産能力の半分が停止する事件が発生、世界の石油供給に大きな影響が出た。今回のUAEへの攻撃はその悪夢を彷彿させる事態だった。
UAEはペルシャ湾に面した7つの首長国による連邦国家。日本にとっては隣国のサウジアラビアに次ぎ、石油輸入量の約4分の1を占める重要な国だ。
アブダビは首長国の中でドバイと並ぶ経済、金融の中心地である。UAEは王族が統治するイスラム教スンニ派君主国家とあってイランのシーア派による「革命の輸出」を恐れ、大国サウジに従って親米・反イランの路線を歩んできた。