教養としての中東情勢

2021年12月3日

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 イラン核合意の再建を目指す米国とイランの間接協議が11月29日、5カ月ぶりにオーストリアの首都・ウイーンで再開された。イラン側は協議を「不当な制裁を解除するのが目的」としてハナから〝けんか腰〟、難航は必至だ。だが、この裏でイランと不倶戴天の敵イスラエルがサイバー攻撃合戦を激化。イスラエルの性的少数派の出会い系サイト情報が流出するなど双方の「影の戦争」が拡大する様相だ。

核協議が行われたウィーンのパレ コーブルク レジデンツ(ロイター/アフロ)

内政優先で後回しにしたバイデン政権

 バイデン大統領は選挙期間中からトランプ前大統領が離脱した核合意を復活させると明言してきた。だが、大統領就任後、内政課題が優先され、イラン問題は後回しとなった。

 バイデン政権がやっとイランの保守穏健派ロウハニ前政権との協議を開始したのは4月になってからだ。結果的に約2カ月間、放置されたが、これが後々の交渉に響くことになった。

 米紙などによると、双方は6月中旬までの協議で、「米国の合意への復帰、並びに部分的制裁解除」と引き換えに「イランの合意破りの是正」でほぼ合意に達し、署名を待つまでになっていた。解除される制裁は約1500項目のうち1040項目で、テロや弾道ミサイル開発などに対する制裁は今後の協議次第とされた。

 しかし、イラン大統領選挙が始まり、協議の結果は新政権に引き継がれることになった。この時点で反米強硬派のライシ司法府代表が大統領に当選することは米側も確実視していたが、制裁による経済苦境下では新政権も合意を受け入れざるを得ないと読んだ。制裁の一部が残ったとしても「前政権のやったこと」として責任を転嫁、制裁解除に伴う〝経済的果実〟だけを自分たちの手柄にするだろうと判断したのだ。

致命的な2カ月の遅れ

 だが、これは読み違えだった。ライシ政権は前政権の合意を事実上反故にし、最高指導者のハメネイ師も賛同した。報道によると、強硬派として知られるカニ交渉代表(イラン外務次官)は29日の間接協議の場で①制裁の即時全面解除②米国が二度と制裁を科さないこと――を要求。もしこの要求がかなえられなければ、核開発をさらに拡大すると通告した。

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