2022年8月10日(水)

教養としての中東情勢

2021年12月3日

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 いずれも米国にとっては受け入れ難い要求。マレー・イラン担当米特使は「イランが自国の立場のためだけに協議を使うことは許されない」と警告しているが、今にして思えば、バイデン政権が2カ月早くロウハニ前政権と協議を開始していれば、ライシ師が当選した大統領選挙前に合意を交わすことが可能だったかもしれない。「致命的な遅れ」(専門家)と指摘されている。

 しかし、イランが米国による過酷な制裁で経済がどん底にあえいでいるのに国家を運営できているのはなぜか。いぶかしく思う向きも多いだろうが、それは中国とロシアがイランから石油を購入していることが大きい。詳しい実態は不明だが、中国がイラン包囲網の抜け穴になっているのは間違いないところ。イランと中国は3月、貿易投資促進など25年間の戦略協定に署名している。

「1週間で核爆弾1個」保有?

 懸念されているのは協議が中断しているうちにイラン側のウラン濃縮活動が加速、核爆弾製造に十分な量の濃縮ウランを蓄積しつつあるということだ。イランや国際原子力機関(IAEA)などによると、同国は現在、濃縮度20%のウランを約114㌔、同60%のウランを約25㌔保有している。「1週間で核爆弾1個を製造できる」と指摘する専門家もいる。

 核爆弾を製造できたからといってすぐに核兵器として使えるわけではない。起爆装置やミサイルなどに搭載するための小型化に2年程度かかるとされているからだ。だが、イランは最近、「核施設の監視カメラの作動再開」を求めたIAEAのグロッシ事務局長の要求を拒否し、欧米諸国の疑念は高まっている。

 こうしたイランの対応に、敵国イスラエルは「イランが核協議を故意に遅らせ、核兵器製造の時間稼ぎをしている」と見て、イランの核関連施設への攻撃計画や「地中貫通弾」の開発に余念がない。イスラエルにとってイランの核武装は国家存亡の脅威だ。イスラエル各紙は最近、「断固イスラエルを抹殺する」というイラン軍将軍の発言を大きく取り上げ、危機感を煽った。

高まる米国による軍事作戦の可能性

 伝えられるところでは、イスラエルはこれまで、イランの核施設に破壊工作を仕掛けたり、核開発の中心人物だったイランの科学者を暗殺したりするなど、核開発妨害の秘密作戦を実施してきた。米国とはかつて「オリンピック・ゲーム」というサイバー攻撃作戦をイランに仕掛けたこともあるが、イランの核開発を止めることはできなかった。

 バイデン大統領は外交努力が失敗すれば、他の手段を検討するとしているが、イランの核施設の攻撃など軍事的手段は極力避けたいのが本音。このため今回の協議で、限定的な制裁解除を提案し、イラン側が核開発の凍結などに応じるかどうかを探りたいハラのようだが、交渉の先行きは絶望的に見える。

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