UAEがフーシ派と敵対するようになったのは、15年に「連合軍」に加わり、イエメンへ軍事介入、反フーシ勢力を支援したからだ。こうした対外政策の決断はUAEを牛耳るアブダビ首長国のムハンマド皇太子の決断によるところが大きい。皇太子は5000人の軍隊をイエメンに派遣したが、19年に軍を撤退させ、その後は反フーシ派勢力への軍事・財政援助を続けてきた。
報道によると、フーシ派の幹部はアブダビ攻撃について「UAEの中枢を狙ったのはイエメンでの攻勢を抑止するため」と説明。「UAEはサウジと比べて防空能力がはるかに弱い」と指摘し、今回のドローン攻撃の教訓から学び、イエメン内戦から手を引くよう警告した。内戦の戦況次第で、ペルシャ湾に戦火が拡大する恐れが現実味を帯びてきたと言えるだろう。
イラン、サウジ、UAEの〝代理戦争〟
そもそもイエメン内戦の現状はどうなっているのか。複雑な構図をおさえておかないと、今回の攻撃を理解するのは難しいだろう。イエメンは現在、①首都サヌアなど北部を中心に支配するフーシ派、②国際社会が承認し、事実上サウジに亡命政権を置くハディ暫定政権、③第2の都市、南部アデンを掌握する「南部暫定評議会」(STC)―という勢力三つ巴の状況だ。
アラブの春により、30年以上政権の座にあったサレハ政権が崩壊、イランの支援を受けるシーア派のフーシ派が首都を制圧、副大統領だったハディ氏が隣国のサウジを頼って暫定政権を発足させた。しかし、反フーシ派勢力の一角だった南部分離派が20年、「南部暫定評議会」を樹立してアデンの支配を宣言、事態はより入り組んだものになった。
対外的に見れば、フーシ派はイランが支援し、反フーシ派勢力はサウジとUAEが肩入れするという、イランとサウジ・UAEとの「代理戦争」の格好だ。ただし、反フーシ派は一枚岩ではない。ハディ暫定政権はサウジをスポンサーにしているが、「南部暫定評議会」はUAEが後ろ盾。アデンの支配をめぐって両者はいがみ合い、交戦までした。
今回、フーシ派のUAE攻撃を誘発したのは、それまでフーシ派が支配していた中部のシャブワ県を反フーシ派が激戦の末奪回、隣接した石油地帯の要衝マーリブ県に進撃する勢いにあることだろう。この勝利の立役者になったのがUAE支援の「ジャイアンツ軍団」だった。