2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年2月4日

 特に、自らの権力維持が統治の目的となっており、そのために民主主義の抑圧や人権の否定が行われているような独裁国家においては、いくらソフトパワーで働きかけても外交目的は容易には達成されないであろう。とは言っても、全く無意味という訳ではなく、ベルリンの壁崩壊のようにソフトパワー効果がボディブローのように民衆の間に蓄積され、ある時点で何かを契機として集団的な決起に至る可能性も全くは排除されないであろう。

SNS時代に新たな現象も

 SNSのようなソーシャルメディアがコミュニケーションの主流となる時代に、独裁国側も巧妙にそのようなツールを利用したり、ソフトパワー自体を論争の対象とするなど、新たな現象も見られる。「民主主義」の用語も多義的であるので、公正な選挙、表現の自由、公正な裁判を受ける権利などのより具体的な概念を用いる必要もあろう。

 また、重要なことは、強引なハードパワーの行使はマイナスのソフトパワーとして逆効果をもたらすことであろう。トランプ時代に傷つけられた米国のイメージは未だにバイデン外交にとってのハンディキャップとなっている。

 中国の戦狼外交もしかりである。いずれにせよ、独裁政権や過激な宗教的政権は、権力維持のために人民の権利を抑圧する強固な権力を有しているのであるから、彼らに対し短期的にソフトパワーの効果を期待することはできないが、粘り強くメッセージを伝え続けることは意味があり、これには日本も貢献できるはずである。

   
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