世界で火花を散らすパブリック・ディプロマシーという戦い

2020年4月9日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 世界中で新型コロナウイルスの脅威が広がる中、いよいよ日本では緊急事態宣言が出され、欧米でも感染者が増えている一方、感染源である中国は収束に向かっているかの印象すら受ける。コロナを巡っても「イメージ戦争」が繰り広げられている、現在の外交で重要となった「イメージ戦略」。アメリカを舞台に日中韓が熾烈な争いを繰り広げているパブリック・ディプロマシーと言われるイメージ戦について、『なぜ日本の「正しさ」は世界に伝わらないのか』(ウェッジ)を上梓した日本国際問題研究所研究員、未来工学研究所研究員、京都大学レジリエンス実践ユニット特任助教の桒原響子氏と、元外務事務次官で、立命館大学客員教授の薮中三十二氏の対談の様子をお伝えする。前編では、パブリック・ディプロマシーとは何か、そして新型コロナウイルスをめぐる中国の戦略について(対談収録日は3月16日)。

世界中で新型コロナウイルスの感染が広がる中、中国で行われた一斉黙祷(写真:新華社/アフロ)

――桒原さんは、薮中さんが主宰する薮中塾グローバル寺子屋の塾生だったのですね。

桒原:まだ薮中先生が寺子屋設立の構想をなさっているときに、声を掛けていただいて1期生として薮中先生に学びました。

薮中:現在は6期生を迎えています。こんな立派な本を出す塾生が出たことは感慨深いですね。

 寺子屋では、3つの重要なことを塾生に伝えています。それは「スピークアウト」、「ロジック」、「アウトスタンディング・パフォーマンス」です。これを簡潔に日本語で言えば、お喋りで、理屈っぽく、目立ちたがり屋となり、日本では嫌われること間違いなしです(笑)。しかし、グローバルで勝負するのであれば、自分の考えをしっかりと発信しないと伝わりません。グローバルな舞台では、習慣や文化、伝統、宗教、言葉もすべて違う人たちと渡り合っていかなければならない。なかでも特に重要なのがロジックで、筋の通った話でないと相手に伝わりません。

 今回の本で書かれているパブリック・ディプロマシーと上の3つは通じるところがあり、日本がなぜ国際社会で中国や韓国の後塵を拝しているのか、という問いかけが突きつけられています。

桒原:パブリック・ディプロマシーは、日本では広報文化外交とも言われ、従来の政府対政府ではなく、政府が相手国の世論に直接働きかける手法です。2001年の同時多発テロを契機に、アメリカでは中東での反米感情を認識し、アラブ社会にアメリカを理解してもらうため、パブリック・ディプロマシーが重要だという認識が広まりました。

 具体的には、まずは自国への関心を抱いてもらい、好感度を上げていく。そうして信頼度を高めることで、相手国の世論のみならず、相手国政府をも巻き込む。そうすることで結果的に、外交・安全保障面で自国の国益に資する。

 パブリック・ディプロマシーの手法としては主に、文化交流、人物交流、国際放送、政府の政策広報などであり、そこではソフトパワーを重要視します。

 これに対し、大戦や冷戦期などではプロパガンダが使われていました。これは西側陣営と東側陣営が、いかに自らの陣営の主義や体制が正しいかを宣伝し、冷戦を戦っていました。

薮中:プロパガンダとパブリック・ディプロマシーの違いというのは、プロパガンダが明らかな宣伝合戦なのに対し、パブリック・ディプロマシーはもう少し上手に、ひっそりと行うという感じですかね。

桒原:たとえば中国がアメリカで行っているのはパブリック・ディプロマシーであって、プロパガンダではないと主張していますが、アメリカはプロパガンダだと批判している。対するアメリカにしても、各国の世論に働きかけています。ただし、プロパガンダよりも、パブリック・ディプロマシーのほうがより透明性や誠意をもって戦略的に実行されるというのが違いと言えます。

 簡単にいえば、イメージ戦略に近いですね。戦闘目的ではなく、イメージによって相手国の世論を、どれだけ自国の味方につけるかですね。

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