世界で火花を散らすパブリック・ディプロマシーという戦い

2020年4月9日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

薮中:ただ、中国は国際的に良いイメージを与えようと必死です。それは政策にも見て取れる。たとえば、国際機関への拠出金が増えているのが良い例です。WHO(世界保健機関)は、3月11日の定例記者会見でテドロス事務局長が「過去2週間で中国以外の感染者数が13倍に増えた」としパンデミックと見られると語りました。ここでわざわざ「中国以外で」などと語ったのは、明らかにWHOへの拠出を増やしている中国への配慮です。他にも中国はWIPO(世界知的所有権機関)の事務局長選挙で、結果的には負けたけれど、中国人がもう少しで当選しそうだった。中国が知的財産権の事務局長になるなんて冗談じゃないと思いましたが。

 一方で、アメリカはトランプ政権が「アメリカファースト」を掲げ、国際機関への拠出や関与を減らしている。こうした米中のバランスが国際機関にも大いに影響している。

――緊急事態宣言(編注:4月7日に行われた)や検査数についてはいかがでしょうか?

薮中:世界の趨勢は、多くテストをやること、ドイツは早くから多くの人にテストをしたことで、結果的に死亡率が低いと評価されています。また、韓国もテスト実施について世界の評価が上がっています。それに対し、日本のテスト数の低さは際立っていて、不思議に思われています。他方で死者の数も少ないようだ、ということで、とにかくよくわからないケース、国だと見られています。緊急事態宣言についても、日本は少し違う国だから、といった目で見られているのかもしれません。

桒原:そうですね。日本自身も、自分たちは他の国と比べてまだ大丈夫、というある意味楽観的な見方が少なからずあるようです。日本国民一人一人の危機意識の薄さを指摘する声は、海外からも聴かれます。それへの対応として、個々人単位だけでなく、組織単位でも、意識づくりや環境づくりをしていくことも重要でしょう。例えば今のうち(3月16日時点)から、在宅勤務が可能な人間から在宅勤務を促すとか、仮に緊急事態宣言が発令されたとしても対応できるように環境整備しておくというように、とにかくできるところから意識や環境づくりをする、といったことです。そして、柔軟な考え方と即時に判断する力も必要だと思います。難しいかもしれませんが、大胆に、そして柔軟に、決断する力は、こうした状況下では重要といえるでしょう。

 コロナウイルスは、今後も感染が拡大することが予想されます。それと同時に、あらゆる偽情報や憶測も広がることも予想されます。最も恐ろしいのは、偽情報などが拡散されて、私たちを含め、世論がそれに怯えたり、踊らされたりすることかもしれませんね。情報通信技術が飛躍的に発展しコミュニケーションをとるのに便利な時代だからこそ、一人一人がしっかりと判断し、慎重にならなければならない。

後編へ続く)

桒原響子(くわはら・きょうこ)
日本国際問題研究所研究員、未来工学研究所研究員・京都大学レジリエンス実践ユニット特任助教
1993年生まれ。2012年米国ウエストバージニア大学において、国際政治学や通訳翻訳等を学び、2017年大阪大学大学院国際公共政策研究科修士課程修了。笹川平和財団安全保障事業グループ研究員、外務省大臣官房戦略的対外発信拠点室外務事務官を経て、現職。専門は、国際公共政策、パブリック・ディプロマシー、ストラテジック・コミュニケーション、メディア研究、世論等。
薮中三十二(やぶなか・みとじ)
元外務事務次官・立命館大学客員教授
1948(昭和23)年大阪府生まれ。大阪大学法学部中退。北米局課長時代に日米構造協議を担当。アジア大洋州局長として六ヶ国協議の日本代表を務め、北朝鮮の核や拉致問題の交渉にあたる。

  
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