世界で火花を散らすパブリック・ディプロマシーという戦い

2020年4月9日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――イメージという部分で言うと、今回の新型コロナウイルスに関して、日本はダイヤモンド・プリンセス号や感染者数などについて諸外国から批判や疑念を持たれています。

桒原:新型コロナウイルスに関する情報発信では、日本はアメリカなどに比べると危機管理の一環としての情報発信が上手くできていない。例えば、SNSなどを上手く使いこなせていない印象です。

薮中:新型コロナウイルスに関しては非常に難しいですね。新型コロナウイルスは、中国武漢で発生し、当初は国際社会から中国への批判が集まった。次に、横浜に停泊していたダイヤモンド・プリンセス号に対する日本政府の姿勢に批判が集まりました。同号には、色々な国の方が乗船していたから余計に批判された。政府もダイヤモンド・プリンセス号に関しては、実際問題としてどうすれば良いかわからなかった部分が少なからずあったと思うんですよ。そこで試行錯誤で対応し、とても情報発信まで気が回らなかった。この間にイメージが悪化した。

桒原:中国の武漢から発生したので、中国はある意味では加害者で、当初は批判を受けたけれど、いまでは他国の支援をしているなど、自らは世界のリーダーシップを発揮しているかのように振舞っており、立場が逆転している。

 外交部の華春瑩報道官は、中国では禁じられているはずのツイッターの自身のアカウントで、日本語で日本へのメッセージを発信しています。また、イランや韓国へ支援物資も送っている。コロナウイルスによって落ちてしまったイメージを戦略的かつ積極的に回復させるために動いている印象を受けます。

 また中国はイランや韓国へ支援物資を送る際にも、「頑張ってください」などの漢詩をつけて送っています。これは元をたどれば、日本の民間団体が中国へマスクなどの支援物資を送る際に、「頑張ってください」という内容の漢詩を添えたのが、中国国内で非常に評価されたという「想いの伝え方」を真似たものです。こういうメッセージの発信の仕方は柔軟で上手い発想ですよね。

薮中:世界で現在もっとも大きな問題になっているコロナウイルスをめぐり、自国の立場を正当化し、あるいは不利な立場に置かないようにするため、パブリック・ディプロマシー上の観点は大事ですね。ただ、中国外交部の趙立堅副報道官が、こちらもツイッター上で「アメリカ陸軍が武漢に持ち込んだ可能性がある」などと主張したのに対し、アメリカのポンペオ国務長官が新型コロナウイルスを「武漢ウイルス」と呼び反論するなど、もはやパブリック・ディプロマシーなのか、ただの喧嘩をしているのかわからない状態にもなっている。

桒原:米中の批判合戦、いわば情報戦に発展していますね。両国とも初めはパブリック・ディプロマシー上の戦略だったのが、ウォール・ストリート・ジャーナルが「中国はアジアの病人」というタイトルのコラムを掲載したことが発端となり、中国は同社の記者3名を国外退去させた。これに対抗しアメリカは中国のメディア5社を中国の宣伝機関だと指定し、ついには先程の趙立堅副報道官のツイートにまで発展してしまった。

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