2024年11月22日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2013年3月18日

 1月21・22日の金融政策決定会合で、日本銀行は、これまで物価安定の「目途」としていた表現を「目標」に変え、「当面の目途1%」を削除して、2%が目標であることを明確にした。数値目標があるのだから、緩和するしかない。金融緩和をこっそり手抜きすることは難しくなる。しかし、2%目標は受け入れたものの、そのための手段である資産買入れ額は減らしてしまった。最後の抵抗かもしれないが、目標を達成できなければ再度緩和を求められる。さらに、新総裁には、金融緩和論者が指名されるだろう。

 徳川幕府が崩壊するとき、上野の山にたてこもり、薩長の侍に唯々諾々と従う訳にはいかないと、死んで意地を見せた幕臣はいたが、日銀理論が崩壊しても、意地を見せる日銀官僚はいないらしい。

 そもそも、日銀官僚も、これ以上金融緩和をしたらハイパーインフレになるなどという日銀理論を信じていなかったのではないか。だから、すぐに方針転換できる訳だ。

 安倍総理が、大胆な金融緩和に言及しただけで、為替が下落し、株価が上がった。為替が下がればやがて輸出が増え、輸出企業の利益と雇用が拡大する。利益が拡大すれば、株価が上がり、投資も増える。雇用が増えれば給与総額が増えて消費が増える。株価が上がれば、高額消費も増えるだろう。消費と投資が伸びていけば、やがて物価も上がる。銀行貸出はまだ伸びていないが、すでに為替と株価にこれだけのことが起きている。いくら金融緩和しても何も起きないことなどあり得ない。

日銀は銀行の利害の代理人

 では、なぜ日本銀行は金融を引き締めていたのだろうか。

 デフレによって物価が下がり、景気が悪化し、その結果、日本の金利はとてつもなく低くなった。景気対策と金利低下によって、膨大な国債が発行されるようになった。その国債を、資金運用難に悩む銀行が大量に保有するようになった。この状況で、デフレを阻止するために大胆な金融緩和を行ったらどうなるか。

 景気は回復するが、回復につれて、物価も名目金利も上昇する。ところが、名目金利が上昇すれば、国債価格が下落する。銀行が多大な国債を抱えている現状では、それによっていくつかの銀行はかなりの損失を被るかもしれない。


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