2024年12月22日(日)

経済の常識 VS 政策の非常識

2013年3月18日

 白川方明日銀総裁が、4月8日の任期を前倒しにして3月19日に辞任することを突然発表した。メディアでは様々な憶測が飛び交っているが、日銀副総裁と総裁の任期のズレをなくす実務的な意味合いが強いだろう。

 白川総裁は頑なに金融緩和を拒み続けてきた。しかし、日銀の支店長を集めた1月15日の会議で「強力な金融緩和を間断なく推進していく」と述べ、アベノミクスの立場に立つことを表明した。

 これまで日銀は、「銀行貸出が伸びない限り金融政策には効果がない。金利がゼロになったら金融政策は何もできない。物価は金融政策では決まらない。デフレは、中国から安価な製品が流入してくるからである。人口や成長力などの実体経済によってインフレ率が決まる。日本銀行のバランスシートの拡大は通貨の信認を揺るがす。一度インフレになったら止めることはできない」等々と唱えてきた。

早期に辞任すれば英雄になれた?

 白川総裁は、なぜこれまでの信念に殉じてもっと早く辞任しなかったのか。日銀理論によれば、「金融政策には効果がないので実体経済には何も起きない。何も起きないからとどんどん量的緩和を進めていくと日本銀行のバランスシートが悪化し、通貨の信認が揺らぎ、円が暴落し、ハイパーインフレになる」はずではなかったか。そう信じているのなら、早期に辞任するのが筋である。

 日銀の支店長達も情けない。自らの総裁が、唯々諾々と政治の圧力に屈し、「強力な金融緩和を間断なく推進していく」と言うのを黙って聞いていないで、圧力に抗議して辞任すべきだと主張する支店長は一人もいなかった。

 日銀理論が正しければ、アベノミクスによって、ハイパーインフレになる。その政策決定に関わる前に抗議の辞任をしていれば、ハイパーインフレになったときには、救世主として再び日銀総裁に迎えられるだろう。自ら、「強力な金融緩和を間断なく推進」していったのでは、救世主にはなれない。


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