2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月3日

 米国のシンクタンクAtlantic Councilのウェブサイトに、イラン当局は核合意の復活に向けた要求を軟化させており、核合意の復活を受容する世論が形成されているとする一文が掲載されている。この‘Iran is preparing public opinion for a revival of the JCPOA’と題する一文は、イランの政治情勢に通じたイラン人とおぼしき人物の匿名による寄稿である。この人物の寄稿はAtlantic Councilがかねて掲載を認めているので、真面目な分析と受け取って良いであろう。

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 上記論説は、イランのメディアの論調につき「メディアは核合意復活の議論の段階を通り越し、復活後の問題に移行したように見える」などと指摘する。紹介されているイランのメディアの論調は、米国との妥協を薦める趣旨というよりは、交渉決裂の場合に責めを米国に負わせるための下地となる趣旨に読めなくはない。しかし、イランの政権の中枢は米国との直接交渉を排除しない態度であると書かれている。もし、この観察が正しければ、近く実際に直接交渉が始まらなければならないということになる。

 メディアでは、交渉をまとめるための時間枠は急速に狭まっている、2月8日に始まったウィーンの交渉ラウンドは最終局面であるとされ、政治的決断が求められる段階に至っていると報じられている。米国関係筋もその趣旨をメディアに語っている。

 交渉がそういう段階にあり、かつイランに交渉をまとめる意思があるのであれば、イランは欧州を介した間接交渉を止めて、米国との直接交渉に切り替える必要があるはずである。イランがそのように行動するか否かが交渉の先行きを暗示するだろう。

 交渉の内容は不明であるが、バイデン政権が約束した「より長くより強い」合意にはなりようがなく、「より短くより弱い」合意にならざるを得まいというのが一般的な見方かと思われる。その責任はトランプの無謀な一方的離脱にある。バイデン政権は、核合意(JCPOA)を復活させた上で、これを補強する追加的な合意を交渉したいのかも知れないが、その見通しは立たないであろう。


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