2024年12月7日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年12月21日

 11月29日、イランの新政権になってはじめて、核合意の復活を目指す交渉がウィーンで再開した。しかし、交渉再開のわずか2日後、イランがファルドーの施設の高速遠心分離機でウラン濃縮を始めたと報じられた。

 これは、イランによる核計画がいかに拡大しているかを示す最新の情報に過ぎない。トランプ大統領が核合意を離脱して制裁を復活させたことに対抗してイランはその義務を順守することを止め、顕著な進歩を遂げてきた。

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 核合意によれば、イランはファルドーの施設での濃縮を認められてない。しかし、イランはその施設で濃縮を再開したばかりか、核合意で認められた濃縮度3.67%を遥かに超える20%の濃縮を行っている。他の施設における濃縮度は核兵器に必要な濃縮度に近い60%に達している。イランの「ブレークアウト」に要する時間(核爆弾一個に必要な量の高濃縮ウランを製造するために必要とされる時間)は1年から約1カ月に縮まったと見積もられている。

 交渉終了後、英仏独はイランが提示した新たな提案は過去5回の交渉で「丁寧に作られた困難な妥協をほぼすべて撤回しようとするものである」「イランの提案を基礎として、これらの新たな裂け目を現実的な時間枠の中でどうやって塞ぐのか不明である」と警告し、「大きな変更」が必要だと述べた。

 交渉は引き続き行われるが、先行きに希望を持たせる材料はない。交渉に先立ち、イランの首席交渉官を務めるアリー・バーゲリー(外務次官)が11月28日付けで‘Talks must address removal of sanctions’と題する一文をフィナンシャル・タイムズ紙に寄稿しているが、強硬な取りつく島のない文章である。彼が要求していることは要するに制裁の解除である。


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