大事なのは「数」ではなく
「価値」で勝負すること
──YouTubeの反響も大きいのではないでしょうか。
森 同業者の方に「どうすればフォロワーや『いいね』の数が増えるか」などの質問をいただくことが増えました。でも、私はフォロワー数を増やすことを目的に発信しているわけではありません。100万人のフォロワーを獲得することよりも、100人でも1000人でも私たちの取り組みに共感して応援してくださる「魚好き」が集まることに意味があると考えています。大事なのは「数」ではなく、「価値」で勝負することです。
例えば、職人がおせち料理を三日三晩寝ずに仕込む様子や、この魚を購入することで存続が危ぶまれる生産者を支援できるなど、普段消費者が見ることのない職人、生産者の苦労や想い、魚が食卓に届くまでのストーリーやプロセスにこそ、他にはない価値があるはずです。YouTubeではそうした発信も行い、その価値に共感していただける方が当社のファンになってくださり、ECサイトや飲食店を継続的に利用してくださいます。
実際にYouTubeの効果は絶大です。飲食店に来て下さるお客さまも「魚好き」の方が増えました。ただの「魚好き」ではなく、魚食文化を残そうという熱い想いを持った方が多いです。そうした方と協業し、寿商店だけではできない新たな取り組みもできるようになりました。これだけ多くの人を魅了できる魚の可能性や伸び代にはまだまだ期待できそうです。
これからは水産業全体をみんなでいかに盛り上げ、共存していけるかが大事です。そのためにも、生産者の想いを消費者に伝え、両者をつなげる役割を果たしていきたいです。消費者の関心が高まればおのずと「魚好き」が増えると思います。
──これからの時季においしく食べられる旬の魚を教えてください。
森 そろそろ貝類がおいしく食べられる時季になっていきます。また、身近なところで今年は水揚げ量がじわじわ増えてきている、春告げ魚のニシンがおすすめです。お子さんでも食べやすい魚だとサクラダイ。脂がのったシーズンに食べていただくと好きになってもらえるはず! 是非旬の魚をおいしく召し上がってください。
『Wedge』2022年3月号で「魚も漁師も消えゆく日本 復活の方法はこれしかない」を特集しております。
四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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