2022年12月4日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年3月3日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活躍。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)など多数。千葉大学客員准教授を兼務。

 戦争開始後、中国外交は苦しい立場に立たされている。ロシアが全面侵攻を仕掛けたことは明らかであり擁護することは難しいが、「友好国」として批判することも難しい。そこで王毅国務委員兼外交部長(外相)は「5つの基本的立場」として発表したとおり、外交的解決を支持するとしながらも、上述の共同声明の通りにNATO拡大によるロシアの懸念にも配慮するという、もどかしい立場に置かれている。

SNS上では戦争を支持するコメントも

 さて、中国政府は苦しい立場に立たされているわけだが、一般の中国人はウクライナの戦争をどのように受け止めているのだろうか?

 日本で育ち、今は上海に住む華人のmakiさんは、ウクライナ侵攻の翌日、中国のネットを見て驚いたと明かす。

中国でのウクライナ侵攻に関する報道やネット世論にショックを受けたというmakiさん(筆者提供)

 「中国メディアは、これは自衛だとプーチン大統領が発言したとか、米国がロシアを戦争に巻き込もうとしているのであり、ウクライナはたんなる道具に過ぎないといった見だしで報道していました。平和が脅かされているという危惧を強く感じていたので、こうした報道はショックでした」

 メディアの論調以上にショックだったのは、ソーシャルメディアに書き込まれた中国ネットユーザーのコメントだった。

 「プーチンは優秀だ、中国とロシアの友好に万歳といったコメントが多く目につきました。戦いを煽るようなコメントは衝撃でした」

 実際、ドウイン(中国版TikTok)を見てみると、「プーチンかっこいい」「世界で一番の硬骨漢だ」といった称賛するコメントが目につくほか、「ウクライナの美女を中国に連れてこよう」「やったー、オレにもウクライナ人の愛人ができるぜ」といった悪質な書き込みも目立つ。まるで戦争を喜んでいるかのようなネットユーザーの反応は衝撃的だ。

 「中国には多くの人がいますし、世代や教育によっていろんな考えの人がいます。コメントにあるようなことを考えている中国人もいるでしょう。ただし、すべての人ではありません」

 実際、makiさんの友人は戦争に反対する人が大多数だったという。

 「NATO拡大は脅威というロシアの主張は理解できるという人でも、ともかく戦争は良くないという考えを持つ人が、私の周囲では大多数です。中国全体で見れば、それがどれほどの数になるのか、1%なのか、もっと多くいるのかはわかりませんが」

中国当局も見誤るネット検閲

 ただ、一部のインフルエンサー、ブロガーからは戦争反対を訴える声も上がっているという。makiさんが見つけたのは「戦争に喝采を送るやつはバカだ」と題した、ソーシャルメディアの文章だった。公開から24時間もたたぬうちに検閲によって削除されてしまったが、それでも勇気を出して声をあげた人がいることに力づけられたという。

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