観光客は産地を聞いてこない
だが函館を訪れた観光客は漁港の水揚げの動向など斟酌しない。誰もがイカやカニ、ウニやイクラ、サーモンやマグロを食べたがる。駅近くの繁華街に居酒屋があり、軒先にメニューが張り出されていた。真イカ(スルメイカの俗称)刺身は1990円で、もはや高級魚だ。こうして値段を明記している店は良心的である。イカは冷凍しても味の劣化が少ない。中国やロシア、米国から輸入される冷凍イカを出しても、ほとんどの客は分からない。
誰もが函館で食べる海産物は地元で獲れた魚と思い込む。が、昨年9月下旬、北海道を襲った赤潮は大量のウニやサケを死滅させ、漁業被害は総額80億円に達した。知り合いの店に訊くとサーモンはノルウェー産、ウニはロシア産、イクラも輸入の鱒の子という。訊かれれば正直に答えるつもりらしいが、観光客は誰一人質問しないという。
もちろん函館にも愚直に魚を仕入れ、売り続けるまっとうな鮮魚店は数多くある。地元客をメインにした生活密着型の商店街ではすべての客がリピーターだ。
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