EVとは走るスマホ
もちろんわれわれは独自のソフトウェアのレイヤーを持ち、また独自のOS作りも企画している。ただしEVとは”走るスマホ”のようなもので、自分が使っているスマホの機能をそのまま車に持ち込む、シームレスにスマホと提携できる、ということが大事だ。OSは独自設計でも、スマホのOSとの連動性が重要で、顧客に対しスムーズな体験を与えることを一番に考える必要がある。現在社内でアプリのエコシステムを開発中である、というのはこうした理由からだ。
カヌーの車のエンジニアリングで特筆すべきは、ハンドルとタイヤの間に物理的なコネクションがない、という点だ。利点としては、これによりハンドルの位置を自由に設定できること、さらに自動運転が導入された際に、こうした技術が必要とされる、という点だ。またブレーキ・バイ・ワイヤー、ドライブ・バイ・ワイヤーという技術も導入している。これらの技術は将来の自動運転で必要不可欠となるものだ。
つまり現時点でカヌーの車は自動運転レベル2に対応するハードを備えており、問題となるのはソフトウェアだけとなる。自動運転に関しては大学などと提携し研究を進めているが、完全な自動運転が可能になるまでにはまだ時間がかかるだろう。自動運転のためには車とインフラ間のコミュニケーションが必要となるが、こうした整備は政府などより大きな機関によって行われるものだ。
カヌーは現在、本社機能の一部をアーカンゾー州ベントンビルに移転し、製造工場をオクラホマに建設している。カリフォルニア州ではエンジニアリングなどを行っているが、製造を本格化させるためにはより広い工場などが必要となるためだ。また会社の成長に伴い工場を拡張していく上で、州によるサポートが必要となる。そのために慎重にロケーションの選定を行った結果、この2つの州を選ぶことになった。中でもオクラホマはメガ・マイクロ・ファクトリーの建設に理想的な場所だと考えるに至った。
メガ・マイクロ・ファクトリーというのは一般的なマイクロファクトリー、つまり小規模の工場を各地に作って現地生産する、というものとは異なる考えだ。カヌーのメガ・マイクロ・ファクトリーというのは、EVに必要な全てのパーツを一箇所でまとめて生産、つまりパーツごとのマイクロファクトリーを集約して製品に仕上げる、メガファクトリーという意味合いを持つ。
一方でアーカンソーにも小規模な工場を持ち、今年中にそこでライフスタイル、デリバリータイプの車を製造することになる。アーカンソー工場は数千台規模の生産能力だが、オクラホマでは数十万台規模となる。
もちろん将来カヌーの規模が大きくなった時に、例えばベースはオクラホマで作り、その後需要のある地域に応じてトップを生産してそこで販売する、というスタイルも考えられるだろう。
カヌーでは今年中に6000台を出荷予定だが、現在米国はEVに対し追い風が吹き、今後数年間は需要が供給を上回る状態が続く。またカヌーはトップの形状により様々な車を生み出せる、というメリットがある。カヌーは全てが国産であり、高いクオリティの製品を提供できるという自信がある。今後はEV間の競争が激化するだろうが、カヌーはフレキシビリティや価格面、品質面でのアドバンテージで競争を生き抜くことが出来る、と考えている。