単一プラットフォームをすべてのモデルに利用する、というビジネスモデルの利点は、一つのプラットフォームにトップを組み合わせることでさまざまな目的に応じた車を生産できる、ということだ。それによりフレキシビリティが得られると同時に、さまざまな車を迅速かつ求めやすい価格で生産することができる。つまり価格をコントロールしやすい、ということだ。すべての人が求めやすい価格に設定できるのは、すべての車を一から作る必要がないためだ。
プラットフォームにはモーター、バッテリー、高電圧の電子製品、HVACシステムなどが含まれており、シームレスに多目的プラットフォームを形成している。そのためさまざまな形状のトップを組み合わせ、多目的のユースケースに合わせることができる。
バッテリーはパナソニック製
カヌーではパナソニックのバッテリーを採用しているが、その理由は世界で最も優れたものを調達しよう、という考えからだ。パートナー企業を選ぶ際には、世界の最先端の技術を持っていること、安全で我々の目的にかなった製品を作り出していることが最優先される。こうしたことを考えた結果、パナソニックがベストなパートナーだと判断した。
現在使用しているのは「21700リチウムイオンバッテリーセル」だが、パナソニックが開発中である「4680バッテリー」も当然ながら今後導入を検討していく。バッテリー用プラットフォームは形状を変えればどのようなバッテリーでも採用できるので、現在のバッテリーにこだわっているわけではない。
ただし現在の目的、すべての人が求めやすい価格の車の製造に、パナソニックの21700バッテリーは合致している。今後製品をアップデートしていく中で、4680を始めとする他のバッテリーの導入も考慮していくことになるだろう。
カヌーは2020年に韓国現代自動車との提携を発表したが、その内容は主にエンジニアリングに関するものだ。ただし提携後もわが社の最重要事項は現在の製品を市場に出すことであり、具体的な提携内容についてはそれほど進展していない。
カヌーの場合、すべての重要なコンポーネントは自社内で開発しており、他社に製造を委託する、あるいは他社がカヌー製品を作る、ということは行っていない。例えば現代が自国の市場にEVデリバリーバンを投入し、それにカヌーが協力する、というようなことはあり得るが、わが社のコンポーネントの多くは特許を取得しており、他社と共同で新しい車を開発する、ということは現時点では考えていない。
また、カヌーがファブレスEVメーカーのためにプラットフォームを提供するか、という問題だが、これも考慮したことはあるが、現時点でのわが社のミッションは自社の車を数多く製造し販売する、という点にある。もし他社の車の製造を請け負った場合、ベースとなるものに他社の要望するトップ、デザインなどを組み合わせることになり、それだけコストも増すことになる。将来カヌーのプラットフォームに異なるトップを組み合わせてほしい、という要望が出ることはあるかもしれないが、その時にビジネス上の利点があれば当然考慮することになる。
今需要のあるEV市場はライフスタイル(ミニバンタイプ)、デリバリーバンなどで、カヌーのフレキシビリティは複数の企業から注目されている。そのためこうした車からます始め、今年中に販売を開始する予定だ。順調に行けば今年中に特定企業との提携や上場について発表することになるかもしれない。
サブスクリプション方式も採用
カヌーはベース価格が2万9000ドルで、トップのオプションにより最終価格が決定する。一部をサブスクリプション(月単位のリース)に回す予定だが、全体の2割以下となる。主に企業向けのプランになる予定だ。わが社はこれから発売を開始する企業であり、市場からのインタレスト、さまざまな経済的ファクターにより、どのような形で販売を行うのがベストなのかをまだ模索している状況にある。
サブスクリプションにサービス、メンテナンスが含まれるか、という質問に対してだが、特にフリート(商用車)に関しては、企業ごとに異なる要望がある。例えばある企業はフリート車両に特定のソフトウェアを搭載しており、ある企業は搭載していない、などの違いがある。要望があればサービスも行う用意はあるが、現時点では考えていない。チャージステーションも同様で、企業からの要望があればチャージステーションのネットワーク作りに協力は出来るが、カヌー独自でチャージステーション網を構築する考えはない。
そもそもEVはガソリン車に比べれば圧倒的に部品数が少なく、オイルチェンジなどの必要もないためメンテナンスは最小限で済む。同時に車体自体も長持ちするため、ハードそのものよりもソフトウェアのアップデートが重要になるだろう。ハードのサービスやメンテナンス、チャージステーションなどについては最適のパートナーと提携し、カヌーは車作りとソフトウェアに専念する、というのが基本的な考え方だ。