2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年3月8日

 中国は後退している。ミャンマーは中国の所有するモニワ銅山での土地収用や環境破壊の訴えを調べている。しかしミャンマーは中国を無視しない。西と東を競わせる利益を知っている。スー・チーでさえ、「中国は隣国で、米は遠いとの事実を忘れるべきではない」といっている。スー・チーが大統領になった時に、民主化ゲームと地政学ゲームをどうするのか見ものである、と論じています。

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 これは、中国のミャンマー進出の動機やミャンマーの思惑などをよく描写しており、地政学的考慮の果たす役割への正当な評価もある、よい論説です。欧米によるスー・チー女史の偶像化から、ようやく、こういう論説が出るところまできたかとの感慨を禁じ得ません。

 今、日本にとっては、ミャンマーに対するかつてのような影響力を取り戻す好機です。麻生副総理が早速に訪問したことは的を射ています。

 一方、マラッカ海峡が中国にとって一つの脆弱性になっているという「マラッカ・ジレンマ」には、中国を、乱暴なことをしない方向に向ける効果があるはずで、我々にとっては好都合と言ってよいのでしょう。

 いずれにせよ、ミャンマーをめぐる影響力競争は、米、欧、中、印、日などの間で今後も続くこと、情勢の変化は今後もありうることを念頭に、最善を尽くしていくということになるでしょう。この競争には、決して負けてはなりません。対ミャンマー政策について、日本が米、印と協調し、中国の思い通りにはならないことを示していくことが望ましく、そうすることが、中国の強圧的な対ASEANアプローチを、再考させることにつながるでしょう。

 なお、ミャンマーではカチン族との武力紛争が激化しています。これを収める手立てを関係国と考えて行くことも、今の好転しつつある対ミャンマー関係の維持には重要なことです。

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